日本で人気急上昇中のチリワイン。昨年はついにワイン輸入量が、フランス、イタリアを抜き一位になりました。
チリワインと言えば安いワイン。さらにそれがレベルアップして安くて旨いワインとして有名になった感があります。ネット上や周りの意見を聞いても、やはり強調されるのはチリワインの驚異的なコスパです。「えっ!この味が1,000円以下で?」のような感じですね。
しかし今やチリワインは安旨ワインだけではありません。高級ワインでもフランスやイタリアを凌ぐ実力を見せつけています。
神の雫では高級チリワインもきちんと紹介されていました。しかし、神の雫本編(全44巻)で紹介されたチリワインは5銘柄。結構少ない……。少ないのでチリワインのランキング形式にしようかと思いましたが、ほぼ価格順なので素直にご紹介することにして、おまけでちょっとワインを付け足しておきます。
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神の雫登場のおすすめチリワイン
目次
チリワインの特徴と安くて旨い秘密
チリワインはどうして安いのに美味しいワインが多いのか。昨今、食品工場のずさんな衛生管理や廃棄食品の横流し事件など、安いものにはそれなりの理由があるという暗部が暴露されるようになっています。私も理由がわからない激安商品(200円の弁当とか…)には手を出さないようにしています。
しかし、チリワインがなぜ安くて旨いのかは構造的に説明できます。理解、納得もしやすいもので、安かろう悪かろうではないことが分かります。
チリワインの安さの秘密は関税と人件費
TPPが話題ですが、チリと日本はすでに2007年にEPA(経済連携協定)を発効しており、段階的に関税が下がっています。2016年時点ではワインの関税は4.6%であり、フランスなどが15%かかることを考えると、この価格アドバンテージは相当大きいです。しかもまだ下がり2019年にはゼロになります。今後はTPPによりアメリカやオーストラリアのワインも関税撤廃の恩恵を受けますが、まだしばらくはチリが有利です。
そしてチリは人件費も安い。ワインは農産物(農業+加工)ですので、人の手がそこそこかかります。チリの最低月額賃金は5万円ほど。成長に伴い上昇中ですが、それでもまだまだ優位にありますね。
※追記
2017年7月、日本とEU間でEPA発効が合意されましたね!ヨーロッパ産のワイン関税は即時撤廃だそうです。チリワインに押されてる欧州連合も本気で低価格のデイリーワインを攻めてくるでしょう。チリワインも対抗してくるでしょうし、楽しみです!
チリワインの旨さの秘密は気候条件と土壌
チリの気候はワイン用葡萄栽培に適しています。日照時間が長く、収穫期に雨が少ないこと(雨に打たれると葡萄が台無しになります)など、天候としてはフランスよりもチリの方が優位性があります。雨を心配しなくていいので、葡萄の収穫を完熟ギリギリまで延ばすことができ、果実味が豊富なワインができます。赤ワインに含まれるポリフェノールもチリ産が一番多いそうですよ。
また、東西南北を「山」「海」「南極」「砂漠」に囲まれており、疫病が侵入しにくい地理になっています。このため、ヨーロッパの葡萄がフィロキセラによって壊滅的被害を受けたあとも、接ぎ木なしで安定して葡萄を栽培し続けてこられました。病気の心配がないので、農薬をほとんど使わずに葡萄栽培ができます。そのためオーガニックワインが多いのもチリワインの特徴。これは葡萄だけでなく、他の農産物や豚肉などの畜産にも有利な条件です。
条件がよければ当然人は集まってくる
さらにそういった気候土壌条件に惹かれて、本場ヨーロッパから有名な醸造家がどんどんチリでワインを造るようになっています(もちろん元々チリの方も素晴らしいワインを造っていますよ!)。気候も土壌も安定していて、葡萄の樹が病気せずに樹齢が上がっていく。古木になれば、さらにワインの味わいは深くなる。これは参入しない意味がわかりませんよね。
これでワインに必要な要素「天・地・人」すべてそろいました。改めてこうやってまとめてみると、チートすぎる。チリワイン最強じゃないか。
神の雫登場のおすすめチリワイン
チリワインは単一品種で造られているというイメージがあるかもしれませんが、高級価格帯になってくると、ボルドーと同じくブレンドが中心となります。ボルドーなら2万円はするワインを1万円以下で飲めたりするのもチリワインの面白いところ。
コノ・スル カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァ
チリワインと言えばこれ、定番中の定番コノスルから、カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルバです。神の雫に登場したのは21巻。中盤ですね。連載中から、なんでコノスル出ないんだろうなーと思っていました。
コノスルにはレゼルヴァシリーズよりさらに安いヴァラエタルというシリーズがあり、800円前後で買えてしまうので、デイリーにはそちらを選んでいる方が多いはず。しかしレゼルバになると味わいはかなり違います。もちろん主観なので、「かなり」がどの程度なのかは問題になりますが。
私は2〜300円余分に出しても、こちらのカベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァをおすすめします。チリカベ独特のチリ臭さもあまりなく、しっかり重いカベルネ・ソーヴィニヨンを味わいたいなら、レゼルバです。
ちなみに検索するときに、「コノスル」「コノ・スル」「レゼルヴァ」「レゼルバ」「リゼルヴァ」など、複数のカタカナ表記があって、結構困ります。ひっかかってこない時があるんですよね……。
コノスルは、他にもオーガニックシリーズや20バレルシリーズ、最高峰のコノ・スル・オシオなどを展開しています。味は値段に完璧に比例していますので、上位のものを飲んで「これなら安いシリーズでよかったな」と思うことはないはずです。
このコノスル・カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァはもちろんいいワインですが、私はコノスル・メルロー・レゼルバとコノスル・カルメネール・レゼルバも好きです。カベルネよりも柔らかい味わいです。白ならゲヴェルツトラミネールが好きですね。
コノスルについての記事も書きました。
ドン・メルチョー カベルネ・ソーヴィニヨン
チリで最も有名なワイナリーであるコンチャイトロが造る同社のトップキュヴェです。コンチャイトロは、スーパーなどの常設格安チリワインであるフロンテラやサンライズを造っている会社なので、ワインファンでなくとも誰もが知っていて、一度は飲んだことがあるのではないでしょうか。ちなみに正式にはコンチャ・イ・トロ(Concha Y Toro)と区切ります。
ドン・メルチョーとはコンチャイトロの創業者のことです。といってもこの銘柄を造ったのは彼ではありません。カベルネ・ソーヴィニヨンにこだわり、チリにワイン文化を根付かせた彼の功績をたたえ、ワイナリー設立後100年たってから造られたものです。
チリは日照量が多く、赤ワインも黒に近い色あいになるのですが、このワインの色は本当に濃い。けれど味わいに強すぎる感じはありません。ドン・メルチョーという名前に反して、女性的な雰囲気のワイン。雫のコメントにありましたが、開けてすぐ美味しいワインです。
カベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインですが、カベルネ100%の割には柔らかい印象です。濃さ、凝縮感はものすごい。酸味はあまり感じません。カシスやプラムなどを凝縮しまくったような味がします。チョコレートやシガーの香りもあって、エレガントなワインです。
8,000円〜10,000円くらいしますが、カベルネ好きなら、失敗したと感じることはないと思います。
アルマヴィーヴァ
先ほどのコンチャイトロとバロン・フィリップ・ド・ロートシルトがコンビを組んで生み出した、チリの最高峰ワインです。神の雫では、ローランの追い出し工作を画策したマキに、一青がぶちまけたワインです。もったいない。
バロン・フィリップ・ド・ロートシルトといえば五大シャトーの一角シャトー・ムートンが有名ですが、カリフォルニアではロバート・モンダヴィと組んでオーパス・ワンを成功させています。このアルマヴィーヴァはオーパス・ワンと同じコンセプトで造っているとみていいと思います。味わいの方向性に似たものを感じます。
オーパス・ワンは4万円はするワインですので、それを考えるとアルマヴィーヴァは最高級ワインとはいえ1万5千円程度で手に入り、驚異的なコスパのワインだといえます。(昔は1万円切っていたんですけどね。。)
このワインは結構な本数を飲んでいます。味わいはヴィンテージによって結構変わるワインなので、伝えるのが難しいのですが、どのヴィンテージでもいつ開けても「高級ワインだなあ」と感じさせてくれるワインです。
ボルドースタイルのワインがお好きで、高級ワインで失敗したくないときにはアルマヴィーヴァでしょう。人にすすめても、まず気に入るはずです。「シャトー・ムートンを造っているところがチリでやってるプロジェクトだよ」と言えば、ワインをよく知らない方にもウケはいいでしょう。長期熟成させたものは、さらに素晴らしいです。
ディオニソス・ワインズ クロ・デ・ファ
ディオニソスワインズから、クロ・デ・ファです。フランス人醸造家パスカル・マーティー氏が愛妻をイメージして造ったというワイン。パスカル・マーティ氏はシャトー・ムートン、オーパス・ワンを手がけてきた人物。はい、アルマヴィーヴァと同じですね。もちろんアルマヴィーヴァも彼の手によるものです。作者様お好きなんでしょうか。
生産本数が極めて少なく、入手が困難です。神の雫に登場した2007ヴィンテージが初ヴィンテージですが、私は買えませんでした。そして2008ヴィンテージはリリースされず……。今は別ヴィンテージもリリースされています。
このワインですが、私はまだ飲んでいません。長期熟成前提のワインなので、セラーに確保してあります。ムートン、オーパス・ワン、アルマヴィーヴァは飲んでいますので、基本的な味の傾向は同じだと思っています。
クロ・デ・ファはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、それにシラーがブレンドされています。それぞれ3分の一ずつということなので、カベルネの力強さよりもメルローのエレガントさが出た女性的なワインになるはず。そこにシラーのアクセントをいれてバランスをとっている、と想像しています。
オリンピックの頃に飲もうかなと思っていますが、たぶんそれより先に開けてしまいます(笑
それでも美味しいでしょうけどね。
カルミン・デ・ペルモ カルメネール
コンチャイトロが造るカルミン・デ・ペウモ・カルメネールです。使用葡萄はカベルネではなく、カルメネールです。やっとカベルネ以外がきました。
チリワインの魅力のひとつに、このカルメネールが飲めるというのがあります。カルメネールは元々フランスで栽培されていましたが、19世紀のフィロキセラ大流行で絶滅しました。今チリで着々と数を増やしていますが、ヨーロッパに病気が蔓延する前に、フランスから持ち込まれたのが起源です。
カルメネールは非常に遅摘みで有名な葡萄品種で、収穫期の秋になると雨が降るフランスでは、タイミングを逃すと雨で全部ダメになってしまうため、もうほとんど育てられていません。気候が違うチリならではの葡萄品種です。
味わいの傾向としてはメルローに似ていると思います。力強くもあるのですが、印象としてはなめらかでエレガントなワインになります。渋すぎず酸っぱすぎずで、飲みやすい綺麗なワインを造ります。
神の雫では一青が、「情熱的な女性のようなワインで、さながら長く美しい黒髪の女性とのむせかえる夜の逢瀬のような、優美なエロスがあるワイン」と表現していました。神の雫にはよくわからない表現もあるのですが(笑、これはかなりしっくりくる表現です。
神の雫登場のアルゼンチンワインのおすすめ
チリワインは上記の5本が神の雫に登場したワインとなります。数はさらに少なくなりますが、アルゼンチンワインも登場していますので、合わせてご紹介します。実は私はチリよりアルゼンチンの方が好みです。マルベックがね。美味いのです。
ボデガ・チャカナ エステート・セレクション レッド・ブレンド
ボデガ・チャカナから、エステート・セレクション・レッド・ブレンドです。こちらはアルゼンチンのルハン・デ・クージョで造られるワイン。最大産地メンドーサより少し南です。
神の雫では40巻に登場。一青が新興ホテルチェーンのCEOアニータと飲んだワインです。このアニータさん、中途半端な登場でしたが、なんだったんでしょうね。。一青は5月の美しい庭園と表現していました。
現実では、ロバート・パーカーJrも2,000円ほどのこのワインに95点をつけるなど、非常に評価の高いワイン。マルベック主体でカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーをブレンドしています。
ベリー系の酸味を覆うようにトースト香やバニラを感じます。果実の凝縮感もあり、2,000円〜3,000円ほどのワインとは思えない味わいで、価格を考えるとコスパ抜群のワインです。
開けてすぐ美味しいですが、パーカー氏によると7〜8年は美味しく飲めるとのこと。2,000円そこそこのワインでこれはすごい。熟成させてみてもいいかもしれません。
カテナ・サパータ マルベック・アルヘンティーノ・ヴィンヤード
カテナ・サパータから、同社のフラッグシップワインであるマルベック・アルヘンティーノです。神の雫登場は22巻。使徒探しの候補に本間さんが持ち込んだワインです。
1万円程度しますが、これは絶対におすすめしたかったワイン。マジで旨いです。凝縮感も深みも、アクセントのカカオやトリュフ、ハーブっぽさも何もかも素晴らしい。おまけに開けてすぐ美味しい。フラッグシップワインのニコラスもいいのですが、私はこちらのカテナ・サパータ・マルベック・アルヘンティーノが好きです。
ちなみにマルベックという葡萄品種は、本家フランスよりもはやアルゼンチンが有名になっています。カルメネールと同じく、これもまたヨーロッパではフィロキセラにやられてしまった品種。真っ黒で濃いのが特長です。カベルネ・ソーヴィニヨンなどの力強いワインを好む方の中でも、さらに濃さを求めるならマルベックはぴったりです。重厚でエレガントな味わいを堪能できます。
カテナ・サパータはアルゼンチンの最高醸造地であるメンドーサにあり、アルゼンチンを代表するワイナリーです。これは最高級ワインですが、デイリーに使えるアラモスシリーズも出しています。こちらもなかなかのコスパワインですよ。
マルベックのほか、白ワインならシャルドネもいい出来です。
個人的におすすめのチリとアルゼンチンのワイン
神の雫本編には登場しなかったのですが、私が気に入ってデイリーにしているワインです。気になるものがあればぜひ飲んでみてください。巻末コラムに登場しているワインもあります。
モンテス・アルファ
モンテス社は超有名生産者ですが、神の雫には登場しませんでした。私の中ではコノスルシリーズよりもすべてのラインナップで味わいは上です。まあその分、ちょっとずつ高いんですけど。
エノテカ・オンラインが力をいれて販促していましたので、飲まれている方も多いと思います。デイリーのモンテス・クラシックよりも、私はモンテス・アルファを好んで買います。どの葡萄品種もおいしいですが、特にカベルネ・ソーヴィニヨンとシラー、白ワインならシャルドネが好きです。
モンテス・クラシックは1,500円前後、モンテスアルファは2,000円強の価格帯です。トップキュヴェのモンテス・アルファ・Mもとても美味しいワイン。綺麗なボルドースタイルで、アルマヴィーヴァとはれる実力を持っているワインです。
トラピチェ・イスカイ
アルゼンチンのトラピチェ社。130年の歴史がある名門ワイナリーです。1,000円そこそこのトラピチェ・ヴィンヤーズシリーズから、1万円を超える最高品質のマノスまで、各価格帯でラインナップを揃えています。
デイリーとして私のおすすめワインは1,500円程度の価格帯であるトラピチェ・オークカスクシリーズ。特にアルゼンチンならではのマルベックがおすすめです。カベルネ・ソーヴィニヨンもいけます。
これが気に入ったらぜひその上位であるトラピチェ・イスカイを飲んでください。神の雫巻末コラムでもおすすめされています。6,000円くらいしますが、マルベックってこんなに美味いのか!と感動します。私はワインにはまったかなり初期のころにトラピチェ・イスカイを飲んで、あまりに美味しくてすぐに1本空けてしまった記憶があります。もちろん何度かリピートしています。
価格によるレベル差がはっきりしている
チリワイン(アルゼンチンワインも)の値付けはかなり味わいに比例していると感じています。
私の目安として、チリワインを選ぶならデイリーなら1,500円程度のもの。人と飲むなら2,000円台のものを選んでおけば、まず納得できる品質のものが飲めます。ひたすら安いのを求めるなら500円〜1,000円のワインでもいいのですが、やはりちょっと味が落ちます。
それから、もう一つのチリワインの特徴として、単一品種で造られているワインが多いこと。しかも1本1000円以下で安いんです。
これは、色々な種類のワインを試し飲みして、自分の好みを知るのに役立ちます。ワインの味は「葡萄品種」「生産地」「造り手」で決まり、まず葡萄品種が一番大きなウェイトを占めますので。
コノスルのヴァラエタルシリーズは、値段1000円以下で主要な葡萄品種はほぼそろっていますのでオススメです。ソムリエ試験の実技を受けるときに、このワインでまず品種を覚えたという方は多いです。
フランスは高くてまずいワインがゴロゴロあるので、冒険しにくいのですが、チリワインなら値段で検討をつけて買っても大丈夫。気軽に選んで楽しめるのがいいですね。
コノスルについてまとめました。