シャンパーニュ好きなら名前を知らない人はいないジャックセロス/Jacques Selosse。神の雫でもジャック・セロス・キュヴェ・エクスキーズ(エクスキューズ)が第八の使徒に選ばれました。他にもジャックセロス・シュブスタンスやイニシャル、ヴァージョン・オリジナルと呼ばれるジャックセロス・VOなども有名です。
Jacques Selosse Sec Exquise NV / ジャック・セロス エクスキューズ
使徒に選ばれる前にも、ジャックセロスは一度漫画に登場しています。15巻でセーラが遠峰一青にランチでシャンパンをごちそうするシーンです。このときはジャック・セロス・エクストラ・ブリュット1996が紹介されていますね。
ジャックセロスは人気シャンパーニュ生産者でありながら、シャンパーニュとしては異質の存在として知られています。しかしながら、その質の高さは超一流シャンパン生産者クリュッグやルイ・ロデレールからも認められるほど。
世界から注目を浴び、すぐに市場から消えてしまうジャックセロスのおすすめワインと人気の秘密をご紹介します。
Photo by:Hôtel restaurant les Avisés
ジャックセロスとは
ジャックセロスはシャンパーニュ地方のコート・デ・ブラン地区、アヴィズ村(Avize)にあります。レコルタン・マニピュランと呼ばれる自社畑の葡萄でワインを造る生産者で、アヴィズ村以外の村にも畑を持っています。
現当主はアンセルム・セロス/Anselme Selosse氏。徹底したこだわりで今日のジャックセロスをワイン界のスターに押し上げた人物です。アンセルム氏はホテルもオープンしているのですが、日本人の訪問も多く、みな一様にその人柄とゴツゴツした手を褒め称えています。ちなみにワイン生産者への「ゴツゴツした手」という表現は、葡萄と畑とワイン造りに真摯に向き合っている証として、最上級の賛辞となります。
ジャックセロスのワイン造り
Photo by:Hôtel restaurant les Avisés
シャンパーニュで異質と言われるジャックセロスのワインは、もちろんその味わいにおいて個性的であるという意味なのですが、ひとことで言うと高級白ワインに近いシャンパーニュであると言えます。
シャンパンの爽快さ、ふわりとした口当たりよりも、重厚で深い味わいと表現されるシャンパンで、料理とのマリアージュなども難しい方だと思います。単体で楽しみたいワインです。
こういうと好き嫌いがハッキリ分かれそうなのですが、かなりハイレベルでまとまっていますので、ワインが好きで飲む方ならまず嫌われることはありません。
こういった味わいを生み出す要因として考えられるものがいくつかあります。
熟成期間が長い
シャンパンは樽熟成を経て瓶詰めされ、さらに瓶の中でも熟成したのち出荷されます。ジャックセロスはそのどちらも長い期間行います。シャンパンはぶどうの収穫から通常2年ほどで市場に出ますが、ジャックセロスは7〜8年前のものがまだ出荷されていなかったりします。
自然農法である
ビオディナミと呼ばれる自然農法が有名ですが、アンセルム・セロス氏は自然農法でありながら少し考え方をかえているようです。添加物や余計な農薬は使っておらず、畑の持つ個性を最大に引き出す方法を常に考えて実践しています。
RMである
レコルタン・マニピュラン(RM)とは、シャンパーニュの生産者の中で、葡萄の栽培から醸造まですべて自社で行う生産者を指します。
対してあちこちの畑から葡萄を買い付けてシャンパンを造る生産者をネゴシアン・マニピュラン(NM)と呼びます。モエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコなどの大規模生産者です。
ジャックセロスはRMであるため、栽培する葡萄や畑の質に、自社のこだわりが100%反映されています。モノづくり大国の日本人の感覚からは、RMはウケがよさそうですね。実際はそれぞれの良さがあり優劣はありませんが、「よいワインはよいぶどうが造る。よいぶどうはよい畑から造られる」という理念を体現しようと思うと、RMが最適なのでしょう。
ドザージュがゼロもしくは少ない
シャンパーニュは通常のワインとは違い、発酵が終わったワインにリキュールや砂糖を混ぜる「ドザージュ」と呼ばれる工程があります。生産者が目指す味の方向が決定づけられる工程です。
ジャックセロスはノン・ドザージュ、つまり補糖を一切しないワインを生産しています(ワインの種類によります)。余計な甘さがないドライなシャンパンができあがります。ジャックセロスが「泡のある白ワイン」と評されることがあるのは、ノン・ドザージュの影響が大きいでしょう。
ソレラシステムの採用
ソレラシステムとは、ワインの生産年によって変わってしまう味わいの変化を少なくする手法です。
もともとはシェリー酒の製造で使われていた手法で、樽を上中下の3段にわけて、一番下の段から抜いたワインの補充を真ん中の樽から行います。さらに真ん中の樽には一番上から補充します。新しい年のワインは一番上の樽に追加していきます。こうやって常に一番下の樽から最終のワイン瓶詰めを行うことによって、味の均一化をはかるやり方です。
ジャックセロスは一部のワインでこの方式に似たやり方を採用しています。
ジャックセロスのおすすめワイン
Photo by:A Growing Boy’s Wine Diary
ジャックセロスのワインは生産がそれほど多くないことと、世界的に味の評価が高いので高価になっています。しかし安いシャンパーニュを数本がまんすれば買える価格ですので、一度はジャックセロスを飲んでみることをおすすめします。その価値は十分にあります。
ジャック・セロス シュブスタンス・ブリュット
ジャックセロスの看板ワインです。シュブスタンス(SUBSTANCE)の意味は「本質」。ソレラシステムを採用したシャンパーニュで、樽から毎年22%分を瓶詰めして出荷しています。1984年収穫のワインからこの手法を用いているそうです。
新旧のワイン(葡萄)がブレンドされるため、ヴィンテージによる味わいの差がなく、いつでも最高のコンディションのシャンパーニュが楽しめます。アンセルム・セロス氏いわく、味を均一化するためではなく「ヴィンテージの差を超えたところにテロワールが見える」からこの方式を行っているそうです。
味わいはかなり複雑で、ジャックセロスのフラッグシップワインと呼ぶにふさわしいものです。
ジャック・セロス キュヴェ・エクスキューズ・セック
神の雫第八の使徒、ジャック・セロス・キュヴェ・エクスキーズです。
セックと呼ばれる少し甘口のワインで、ジャックセロスが造るセックはこれだけです。漫画では西園寺マキに「甘口のセックは流行じゃない」と評されていました。雫のツッコミは「使徒に流行なんて関係ないだろ」。そりゃそうだ(笑。
シャンパンにおける補糖はツンツンしたミネラルなどの「とがり」をとって飲みやすくしてくれますが、あまりやると甘ったるくなります。スパークリングワインは、どちらかと言えばキリッとした味わいが好まれますので、ブリュット(辛口)に比べると、確かにセックは生産数も少なめです。
しかし主流のブリュットを退けて神の雫作者が使徒に選んだほどのシャンパーニュ。美味しくないわけがありません。絶妙なバランスで優しい甘味を楽しませてくれます。
神の雫では、「マドンナのワイン 過ぎ去りし日のセレナーデ」と表現されています。仄かな甘味と酸味のバランスが素晴らしく、これ単体でじっくり味わって飲みたいワインです。
ジャック・セロス イニシャル・ブリュット
ジャックセロスの中では手に入りやすい、エントリー的な位置づけのワイン。とはいえ、味わいはそこらのシャンパンのトップキュヴェより遥か上です。もちろんお値段も……
トーストや桃の香りが感じられ、「泡のある白ワイン」との評を感じられるシャンパーニュです。
手に入りやすいとはいえ、年間3万本程度しか生産されませんので、見つけたら早めに確保です。
ジャック・セロス ヴァージョン・オリジナル エクストラ・ブリュット
イニシャル・ブリュットと同じく、そこそこ手に入りやすいジャックセロス・VOです。価格もまあまあ買いやすいです。あくまでジャックセロスの中ではという意味ですが。
ジャックセロスが所有する3箇所の畑から造られたワインのブレンドで、ノン・ドサージュで造られる極辛口のシャンパーニュ。
イニシャルより甘味が少なく、重厚で複雑な味わいがお好きならならこちらを。
ジャック・セロス・ロゼ・ブリュット
色合いが本当に美しいジャックセロスのロゼ。そこにあるだけで場が華やぎますね。生産本数が少なく手に入りにくいワインです。ジャックセロスは高価なので、スタンダードなブラン・ド・ブランを優先してしまい、こちらのロゼは飲んだことがありません。ですが、やはり評判はいいですね。
通常の白泡シャンパンに赤ワインを混ぜて造る方式のようです。入れる赤ワインはピノ・ノワール100%のワインをエグリ・ウーリエから仕入れているとのこと。エグリ・ウーリエもまた人気生産者ですね。
ジャック・セロス リューディシリーズ
畑ごとの名称がついたリュー・ディというシリーズを展開しています。ちょっとお高いので、イニシャルやVOでジャックセロスの味の傾向を知って、自身の好みと合っていると分かってからの方が楽しめると思います。
リューディシリーズは種類も結構ありますので、最初はどれを選べばいいか分からないと思いますし。
もしくは最初から思い切って最上のジャック・セロス シュプスタンス・ブリュットに突撃する方がいいかもしれません。
他にもジャック・セロス・ラタフィアという酒精強化ワインも造っています。
ジャックセロスの宿
Photo by:Hôtel restaurant les Avisés
少しふれましたが、ジャックセロスの当主アンセルム・セロスは、アヴィス村にホテルも開業しています。通称セロスの宿。部屋数は10室のみで、日本人的なイメージではペンションの雰囲気です。アンセルム氏にもよく会えるそうですよ。
通常のフランスワインツアーなどには組み込まれませんので、自分でレンタカーを借りて行くのがよさそうです。ちなみにシャンパーニュ地方への旅行では、「ランス/Reims」という地名がキーになります。TGVならパリから45分で行けます。
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シャンパーニュのワイナリー巡りも面白そうなのがあります
フランス:現地発のワインツアー一覧
シャンパーニュ好きなら一度は飲むべきワイン
ジャックセロスは、シャンパーニュ好きなら一度は飲むべきワインです。イメージしていたシャンパンと違うのにおいしい!という感覚がおもしろく、味わいの複雑さに驚くと思います。
ドン・ペリニヨンを擁するモエ・エ・シャンドンやクリュッグ、サロンなど、超高級シャンパーニュたちとどれも味の傾向が違うのに、なぜかそれらに匹敵すると思ってしまう不思議。
特別な日にぜひジャックセロスのシャンパーニュを開けてみてください。
他にもこちらの記事で高級ワインを紹介しています。