家のワインセラーがいっぱいで、すでに冷蔵庫などにワインが侵出している状態から、さらに12本入り段ボールが到着。「そうはならんやろ」と自分を見失った経験は、健全なワインラバーなら皆さんお持ちだと思います。
私も、冬の間にせっせとため込んだワインが収納の限界を超え、この春に新しいワインセラーを買い足しました。ワインセラーについては過去に記事も書いていますが、改めて調べていると、やはり必ず目にとまるのが「ルフィエール(Lefier)」ワインセラーです。安いのよ。
ルフィエールは、セラーを買おうと思ったとき、おそらく誰もが目にする「セラー専科」さんの自社ブランド。ウチのセラーも1台はルフィエールです。安くても特に問題なく、きっちり動いてくれています。
同じ容量なら他社製よりほぼ確実に安く、性能もしっかり問題なし。「これ実際中はどうなってるのよ?」と前から思っていたので、ちょっとセラー専科さんにおじゃまして、ルフィエール開発担当の方にインタビューしてきました。ワインセラーの選び方なども聞きましたので、セラー購入検討中の方も参考にどうぞ。
目次
「セラー専科」の自社ブランドセラー・ルフィエール
ルフィエールはワインセラーの専門店「セラー専科」の自社ブランドです。ネットショップ黎明期の2000年に、おそらく日本で初めてのワインセラー専門店として登場したセラー専科。今ではワインも数多く販売しているので、厳密にはワインセラーだけの専門店ではないのですが、主要なメーカーをほぼ取り扱う圧倒的な品揃えと価格で、今も成長を続けているショップです。
運営は、酒類の総合販売業リカマンホールディングスのグループ「株式会社イズミセ」。以前に当サイトでも取材した、Twitterでおなじみの戸塚尚孝さん(@cellar_likaman)が社長を務める会社です。
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そんなセラー専科のルフィエールワインセラー開発担当は、EC事業部 課長の三木重正さん。今回、社長の戸塚尚孝さんとお二人でインタビューに応じていただけました。
ルフィエール・ワインセラー開発秘話
シロ:今日はセラー専科の自社ブランド「ルフィエール」について、詳しく伺いたいんですが。
三木さん:はいどうぞ。
尚孝さん:まずあれ、名前の由来からいっとかなあかんのちゃう?
三木さん:いきなりそこ言っちゃうんですか笑
シロ:ん?なんですか?
三木さん:私は会議に参加していないんですが、あれ「よく冷える」からきてるとか。よう冷えーる → よーふぃえーる → ルフィエールみたいな笑
シロ:www ダジャレネーミングなんやアレ笑
三木さん:嘘か誠か、それっぽい響きでよさそうな語感から、フランス語表記でよくみる「ル」と冷えるを融合させた感じだったと聞いています笑
シロ:その会議参加してみたいですw でもいいネーミングですよね!ワインセラーについてはそこそこ調べているつもりですが、ルフィエールの由来は聞いたことなかったですね。
三木さん:たぶん外には言ってないと思います笑
シロ:さっそくネタ提供ありがとうございます!
シロ:では、改めてルフィエールについて伺います。最初に登場したのは、いつごろでしたっけ?
三木さん:2011年発売ですね。
シロ:すでに他社の国内メーカーありましたよね。参入を決めたのはどうしてですか?
三木さん:ウチは酒屋(リカマン)がベースで、いろいろなお酒を取り扱っています。一度に大量買いされるお客さんも多いんですが、ワインはやっぱり置き場所に困りますよね。そこら辺に放置できないですから。
でも、そのころワインセラーってまだ一般的ではなくて、気軽に買えるものじゃなかったんですよ。それで当時の社長、今の会長が、「もっと安くて日常生活に溶け込めるようなセラーがあれば、喜んでもらえるんじゃないか」と、そこから開発が始まったんです。
シロ:なるほど。最初は家庭向けなんですね。
三木さん:そうです。初めて出したのは小型の12本用ペルチェ式セラー(※)なので。当時は18本用ペルチェで3万円くらいが安いワインセラーと言われていたんですが、「1万円くらいなら買いやすいんじゃない?」ってことで、その価格に。
尚孝さん:これね、ぶっちゃけ小型ペルチェは利益なんてほぼないですよ。直販でマージン不要ったって、やり過ぎくらい下げてます。
シロ:いやー、確かに安いですよね。セラーで利益取れなくても、家庭に普及すればその分ワインが売れるみたいなところもあるんですかね。
尚孝さん:ワイン買ってもらってナンボというのは、確かにありますね。まとめ買いしやすくなりますし。家にワインがある生活はやっぱりいいものじゃないですか。
シロ:間違いないですね。
三木さん:気軽にワインを楽しめるように、家庭でのワインセラー所有に対するハードルは下げられたかな、とは思っているんですけどね。
シロ:それは確かにあると思います。昔はセラーってもっと高いイメージでした。でもセラー専科で他社のワインセラーも扱っているのに、その劇的な価格設定は文句言われたりしなかったんですか?
三木さん:まあ、一部にはそう言われるところもありましたよ。ただ、大手メーカーとは棲み分けがしっかりしているので、お互いにワインセラーを世の中に広めていこうという感じになっていますね。
シロ:棲み分けというと、最初に沼にはめる撒き餌がルフィエールで、容量足りなくなって上のクラス買うときには、大手メーカーも検討に入るということですね?私のことですがw
三木さん:言い方はアレですが、まあその通りですね笑。マーケットの拡大には貢献できていると自負しています。
ルフィエールのラインナップ
ワインセラーのルフィエールは、大きく4つのカテゴリに分かれています。
- ペルチェライン
- ベーシックライン
- スリムライン
- プロライン
それぞれのライン(シリーズ)で、収納本数が違うワインセラーを展開。12本から171本まで、様々な容量のセラーから選べます。
ペルチェライン以外はすべてコンプレッサー式です。ざっくりした違いは以下のとおり。
【ベーシックライン】コンプレッサー式のワインセラー。収納本数15本(6月新商品)〜55本。小型で安価なものから、大型2温度帯まで幅広く展開。
【スリムライン】コンプレッサー式。ベーシックラインと基本性能は同じだが、奥行きが薄く、細身のデザインが特徴。18本〜55本で、ベーシックにはない24本や27本タイプなどがあり、棲み分けがされている。
【プロライン】コンプレッサー式。加温ヒーターや湿度対策、棚間の調節機構なども付いたフルスペックタイプ。94本と171本の大型2種類。
シロ:ルフィエールのシリーズ、いくつかありますが、どれが売れ筋ですか?
三木さん:小型のコンプレッサー機種、ベーシックラインがよく売れていますね。
シロ:小型コンプレッサー式は、ベーシックのほかスリムラインもありますよね。横幅がスリムで、背が高いやつ。
三木さん:はい。横幅と、あと奥行きが短いのが特徴のシリーズですね。全体的にスリムですが、どちらかと言えばウリは奥行きの方ですね。
シロ:あ、そうなんですね。幅が狭い隙間に入るセラーみたいなイメージでいました。
三木さん:もちろん幅も大切ですが、ワインセラーは奥行きの方がネックになることが多いんです。ワインボトル1本分の長さにセラーの厚みをプラスした奥行きがどうしても必要になるので、設置するとそこそこ出っ張ります。
家庭だけではなく、今は小規模の飲食店でもワインを置くようになってきていますが、奥行きの問題でセラーを置く場所がないと相談されることが多かったんです。それで、設置面積が小さいスリムラインを開発しました。
シロ:確かに狭いお店だと奥行きあるワインセラーは無理ですもんね。どうやってスリムにしているんですか?
三木さん:設計、工場と話し合って、裏の基板配置を工夫しています。ボトル1本分の奥行きはどうしても必要なんで、それ以外をいかに縮めるか試行錯誤しています。
シロ:あ、それで思い出しました。ボトル1本分の長さってどのワイン基準なんですかね?ドイツワインとかアルザスのボトルだと長いですよね。
三木さん:そうですね。ボトルの高さ、つまり寝かせた時の長さに対応する奥行きは、各社製品によって違いますね。
シロ:むう、もし入らないと困りますね。ルフィエールは入ります?
三木さん:ドイツ、アルザスは入ります。特殊なボトルじゃなければですが。ワインボトルはいろんな形状があるので、言い切れないのがツライんですよね。他社製ですが、イタリアのブルネッロ程度の長さでも入らないセラーを見たことがあります。ウチはさすがにそこまで短くはしないです。
尚孝さん:これほんとややこしいんだよねえ。瓶の長さと、あと太さ。20年くらい前ならボルドー基準にしておけばよかったんですよ。でも今はブルゴーニュやシャンパーニュが多いですからね。ボルドーと違って瓶の太さがバラバラで、はっきりと「入ります」って言いにくい。
三木さん:シャンパーニュ大丈夫ですって言っちゃうと、モエは入るけどドンペリやクリュッグは入らないサイズがあったりしますよね。だから、直径何ミリのボトルなら入りますとしか言えないんです。でもこれだと感覚的に伝わりにくいですよね……
シロ:そうですよね。でも「収納本数」のスペック表示は必要なわけで。あれはボルドーボトル換算ですよね?
三木さん:そうです。何本入るかは基本的にボルドーで計算します。各社同じですね。でも実際には全部ボルドーじゃなくて、他のも飲まれますよね。サイズの違うボトルが増えると、棚間や横幅によっては「入るけど収納本数は減る」みたいなことも起こります。想定より大きめのセラーを買ったほうがいいというのは、その意味もありますね。
ワインセラー開発は基本的に“客の声”から
シロ:セラーの新規開発やどんなラインナップにするのかは、どうやって決めているんですか?
三木さん:お客さんの声を重視していますね。ウチはネットのセラー専科と、直接接客するショールームもあって、常に困りごとや要望を聞ける立場にあります。自社ブランドのルフィエールが出るずっと前からです。やっぱりニーズは掴みやすいですよね。
シロ:どんな声が多いですか?
三木さん:以前は、やはりとにかくセラーは高いと言われていました。もう少し気軽に買えるものはないかと。それでルフィエールや他の安いセラーがパラパラと出てきて。そうすると今度は2台目を検討するときに、使ってみた不満点が出てきます。もっと容量の大きいもの、庫内が広い方がいい、設置面積が小さい、2温度帯がいいなど、その都度新しいセラーに盛り込んでいきました。
シロ:マーケットインの思想ですね。ワインセラーって、基本性能はシンプルだし、差別化難しそうだなと思っていたんですが。
三木さん:こちらがウリにしたい機能をゴリ押しするようなやり方はしないですね。不満点をしっかり聞いて、次の開発に反映させる。ルフィエールは、お客さんと一緒に育てていくブランドだと思っています。製品アピールだけに注力して、お客さんのことをあんまり考えてないなと思うメーカーもありますからね。
シロ:ん?具体的にどこで何があったんですか?
三木さん:言ってもいいのかな(チラッ)
尚孝さん:ええやろ(即答)
シロ:お願いします笑
三木さん:開発時の話ではないんですが。セラー専科のショールームでお客さんと話す際、2台目3台目をご検討の方も多くいらっしゃいます。そのとき以前に買ったセラーの愚痴というか、クレームを聞くメーカーってほぼ決まっているんですよ。
シロ:どんなクレームですか?
三木さん:とにかく対応が悪いと。たとえば、届いたワインセラーに不具合や傷があったとき。普通は、「申し訳ございません。お手数ですが写真をお送りいただいて、確認後に交換の手続きに入らせていただきます」とかじゃないです?
でもそこは、「では当社宛てにお送りください。こちらで該当箇所を確認しますが、当社基準で不良に当たらないと判断した場合、そのままご返却、送料はお客様負担となります」と言い放つらしいんですよね。
シロ:それは「はぁあ?」ってなりますね。
三木さん:ほんとに一例ですが。他にもいろいろ聞いていて、あまりお客さんを人として見ていないというか、売ることだけ一生懸命であとは知らんって感じで。当然、お客さんの声を製品に反映しようという考え方はないでしょうし。
シロ:全部、うるさい客がイチャモン付けてきてるだけって思ってそう。我々一般人には、そういうとこの見分け方難しいですけど。
尚孝さん:レビューをしっかり見れば、ある程度はわかりますよ。Amazonはダメですけど、楽天はサクラ対策もしっかりしているので、長く販売していると差はついてきます。
シロ:なるほど。確かにAmazonはザルですが、楽天はある程度厳格って以前もおっしゃっていましたね。
開発担当からみたワインセラー選びのポイント
セラー開発担当の三木さんに、ワインセラー選びのポイントを伺いました。(※もし自分が選ぶなら。という個人的な観点で)
結論としては、以下の順番で大切です。
- 想定本数よりも大きめのものを選ぶ
- コンプレッサー式
- 棚間が調整できる
- スライド棚
1、2はほぼ必須条件。3、4はあれば快適になる機能です。
先に2のワインセラー冷却方式について、おさらいしておきます。以下3つのタイプそれぞれに特徴があります。
【アンモニア式】アンモニアの気化熱で冷やす方式。モーター・ファンなどの駆動部がなく、音がしないのがメリット。振動もない。正しく使えば長期保存も可能。デメリットはやはり冷却力の弱さ。冷やすのに時間がかかる。本体価格も高い。
【コンプレッサー式】冷蔵庫と同じ仕組み。コンプレッサーによる冷媒(ガス)の圧縮、膨張を繰り返して冷やす。冷却力が強く、素早く冷やして休むを繰り返すため、消費電力が少ない。モーターの分スペースを取るので、大型に向く。デメリットは音や振動があること(改善されている)。ペルチェ式より高額。
ペルチェ式・アンモニア式・コンプレッサー式の違いについて
シロ:三木さんがご自身でワインセラー買うなら、どう選びます?
三木さん:まず、冷却方式はコンプレッサー1択です。あとはもう、「やっぱり収納本数足りなかった」といって、2台目3台目を買われるお客さんをずっと見ているので、とにかく大きめのセラーにすることですね。こっちの方が大事かな。
シロ:そうですね。どれだけあっても、埋まってしまうのがワインセラー。冷却方式はやっぱりコンプレッサーを選びますか。
三木さん:ペルチェ式は安いのがメリットなんですけど、性質上、周辺温度から14度くらい下げるのが限界ですから。日本の気候も暑くなってきているので、猛暑日が続く夏は設定温度まで下がらないことがあります。設定温度15〜16度で、外気温が30度くらいなら機械も休む時間があっていいんですけどね。それ以上の気温が長く続くと、ずっと機械が稼働し続けて消耗が早くなります。
シロ:なるほど。安いけど能力と耐久性が……ってことですね。ウチのペルチェは8年以上普通に動いてますが、どれくらいで故障が多くなりますか?
三木さん:使い方にもよりますが、3〜5年で何かしら起こったとご相談いただくことがありますね。なので、ワインセラーを持つきっかけとしてのペルチェ式はいいのですが、買い換えや2台目のときにはコンプレッサーを提案します。価格差はありますが、今はだいぶ安くなってますから、できれば最初からコンプレッサーをおすすめしたいですね。
シロ:コンプレッサーの耐久性はどうなんでしょう?
三木さん:こちらもまた使用環境によりますが、冷蔵庫と同じと思っていただければ。一般的には冷蔵庫の寿命は10年程度と言われていますが、いつ買ったのかわからないような長く使っている冷蔵庫ってありますよね。
シロ:なるほど。アンモニア式はどうですか?というか、あんまり見ないですよね。
三木さん:もうどんどんなくなってますね。アンモニア式は冷却力が弱いんですよ。メリットもあるんですが、日本の気候がこうなってくると……。大型でガラス扉とかになると、もう冷やせないと思いますね。
シロ:あ、ちょっと話それますが、やっぱりガラス扉だと冷えにくいんですね?
三木さん:はい。通常の扉の方が、中に断熱材が入る分、外気の影響を受けにくいですね。
シロ:そうか、光の問題だけじゃなく断熱材。そりゃそうですね。まあでも普及しているセラーをみると、世のニーズ的にはガラス扉なんでしょうね。
三木さん:中が見えないとやっぱり不便ですからね。アンモニア方式に話を戻すと、万が一故障したときにえらいことになるのもネックです。冷媒で使用しているアンモニアが漏れると、もうニオイがすごいどころじゃなくて、目を開けていられないので。飲食店だと営業できないですし。
シロ:それは確かにリスク高いですね。
三木さん:経年劣化する前に部品交換するなど、正しく使えばいいと思うんですけど。故障したときのダメージは一番大きいですかね。
尚孝さん:でも、僕は家で長いことアンモニア式のサイレントカーブ使ってたよ。とにかく静かで振動もまったくなくて、めちゃくちゃよかった。
三木さん:故障しなければ、快適だと思いますね。
シロ:音はよく比較されますよね。主にコンプレッサー式のデメリットとして「音が出る」と言われますが、実際のところはどうですか?
尚孝さん:昔に比べたら、今のセラーはぜんぜんマシだよねえ。
三木さん:ですね。ただ、問い合わせで「音は出ますか?」と聞かれること多いんですけど、これわりと返答難しいんですよ。
シロ:まあ人によって感じ方違いますよね。
三木さん:はい。気になる方は、どんなに小さな音でも気にされるでしょうし。あとは、置き場所にもよります。反響するものが近くにあれば、小さな音でも大きく聞こえます。生活音がある場所なら気にならない音だとは思っていますが。
シロ:寝室には不向きと言いますよね。でも実際、寝室に置かれる方ってそんないるんですか?
三木さん:ワンルームにお住まいの方とかですね。
シロ:あー、それは仕方ないですね。一人暮らしのころはワインセラーなんて考えられなかったですが、みんなすごい。私はペルチェ式、コンプレッサー式両方持っているんですが、まあコンプレッサーの方は、確かに冷蔵庫みたいなブーンという音しますよね。
三木さん:そうですね。ブーンとか、水が流れるようなチョロチョロ音はありますね。気になるかはやはりその人次第です。結局、「音は冷蔵庫と同じです」という回答になってしまうんですけど。
棚間や横幅には気をつけて
三木さん:あとはワインが収まる棚の上下間隔、棚間と言いますが、ここがボルドー基準ギリギリだと、ブルゴーニュなどの「なで肩」ボトル入らないので注意ですね。同じく横幅も、狭すぎると想定の本数入りません。
シロ:スペックをよく見せようとするなら、ボルドーボトル基準で棚間や横幅の寸法ギリギリにして作った方が有利ってことになりますよね。実際そんなことしたら、「入らへん」ってクレームの嵐だと思いますが。
尚孝さん:いや、「この作りはダメやろ」ってセラーは実際にありますよ。わりと有名な家電メーカーなどがワインセラーに参入したりするんですけど、中見ればワイン知らないままやってるなーって丸わかりです。
シロ:あるんですね、そういうセラー。
尚孝さん:まあ、そういうところは参入しても、たいていはすぐに潰れていきますけどね。ウチも後発ブランドですが、最初の一番小さいペルチェ作るときから、長細いドイツワインや太いシャンパンボトルが入るよう設計しました。安価なセラーでも、そこは会長のこだわりだったんですよ。
三木さん:ちょうどいい「悪い見本」がありますよ。見ますか?
シロ:お願いします。
三木さん:こちらのワインセラーなんですが、棚間がすごく狭いんです。ボルドー基準のボトルでも、あまり余裕がないサイズです。また、ボトルを互い違いに収納するタイプなのに、棚のスライド(引き出し)ができないのも不便ですね。奥のボトルが取りにくいので、特に飲食店だとオペレーションが大変になります。小さな手間の積み重ねは、大きなコストになりますから。
シロ:確かに使いにくい。棚間狭すぎてラベルに傷がつきそうですし。
三木さん:しかも大型なので、上の方はもっと取り出しづらいんですよ。大型セラーは、女性の方から「上の段がよく見えない」と言われるのですが、もうそのレベルではないです。
シロ:いやー、セラー出しているとこならそれくらい分かってるやろと思ったら、あるんですねえ。
三木さん:一番ひどい例ですけどね。
尚孝さん:でも、棚間が大事ですよというのは、もっとしっかりページでうたった方がいいよね。意外と、比較するときに見ていない人もいるんじゃないかと思う。
シロ:そうかもしれませんね。棚間ちゃんとしたやつも見せてもらえますか?
三木さん:ルフィエールになりますが、こちらは小型でも棚間に余裕をもたせてあります。
シロ:確かに棚間が広い。棚の引き出しもできますね。でも棚自体の高さは固定なんですね。
三木さん:棚の位置が変えられるのは、上位機種の「プロライン」シリーズですね。棚のところにピッチが刻んであります。棚間が細かく調整できるので、1カ所だけちょっと広めにしたり、段数を減らして全体的に広くしたりできます。
シロ:これいいですねえ。引き出しもできるんですか?
三木さん:はい。スライド棚です。ただ、こちらはプロラインなので小型はなく、容量は大きめになりますけどね。
シロ:ちなみに何本入りでおいくらですか?
三木さん:このC260は、94本収納で14万8000円(税込16万2800円)ですね。(※現在は物価高でこの当時より値上がりしています)
シロ:おおう。いやでも、値段だけ見たらゴツイですけど、100本サイズでその価格は普通ないですね。
尚孝さん:僕はもう、ワイン好きの家庭ならこのC260で決まりだと思ってるんだけどなあ。本体サイズもめっちゃ大きいってわけじゃないし。
シロ:でもこれ「プロライン」なんですよね?そういや、家庭用と業務用って何が違うんです?
三木さん:基本的にプロラインは大型なのと、機能がフル装備って意味ですね。先ほどの棚のピッチ刻みやスライドレール、あとは加温と湿度対策がついています。家庭用は買いやすい価格帯とサイズ感を優先して、そこまでこだわらない部分を削る感じです。
シロ:なるほど。家庭用だとパワーが弱いとか、そういうのはないんですね。
三木さん:はい。冷やすための基本性能は同じですね。家庭用でも変わらずしっかり作ってあります。開発時も特に何かを変えたりはしないです。お客さんの要望は、家庭用・業務用ほとんど同じですから。
ヒーターと加湿機能について
シロ:冬場に温めるためのヒーターと、加湿についてはどうですか?家庭用だとついてないですが。
三木さん:どこまでこだわるかですよね。ヒーターについては、あまりにも寒いところに置かなければ、なくてもいいとは思うんですが。
シロ:私もずっとそう思っていて。氷点下にならなければ大丈夫じゃないかと。
三木さん:そうですね。寒冷地や別荘地では怖いかもしれないですけど、家の中で普通に人が活動できるレベルであれば。でも熟成に温度が必要なのは、確かにその通りなんですよね。
シロ:劣化させないための保管か、長期熟成を目的とするかですよね。温度が低い場合、劣化はしないけど熟成が止まるんですよね。
尚孝さん:そうそう。あと熟成に関しては、15度前後でと言われますけど、もっと高めの温度で早めに熟成させるとかもできますからね。ワインにとって何が本当にいいのか、よくわからない部分はまだある。だから、結局は自分がどうしたいのかって話ですよ。
三木さん:このあたりは何が一番いいのかと言われると、激しい論争が始まってしまいますからね笑。どれが「正解」だとは、なかなか言えないです。劣化対策に関しては、個人的には多少の温度変化があっても、じんわり変わる分にはそんなにワインは弱くないよとは思います。
尚孝さん:そうやね。でも、急激な温度変化だけはマジでやばいね。ネットショップとしては、クール便配達後の玄関放置が一番怖い。
シロ:やっぱり即セラーに入れないとダメですか。
尚孝さん:夏場はちょっと置いておくだけで、すぐに吹きますよ。特にブルゴーニュなんかは。ワインは急激な温度変化がとにかくダメなんです。
三木さん:店舗間のトラック配送も、ちょっと車(冷蔵車)から離れて気を抜くとマズいですよね。
尚孝さん:そうそう。夏場はほんと気をつけないと。まあ家庭なら、コルク浮いてきたとしても、すぐに飲んじゃえばいいんですけどね。
シロ:ふむふむ。一度に何本も吹いちゃうと大変そうですが笑。ワインセラーに話を戻して、加湿機能はどうでしょう。必要ですか?なければコルクが乾燥して縮むとか言いますけど。
尚孝さん:そもそも、湿度については昔ほど聞かないよね。今そこをうたってるメーカーないんじゃないかな。
三木さん:そうですね。あまり機能アピールのメインにはしないですね。ルフィエールではプロラインに湿度対策を施していますが、機能的には加湿というより保湿に近いイメージですかね。加湿器のように水蒸気をガンガン噴霧するわけではないので。
シロ:どういうやり方をしてるんですか?
三木さん:庫内を結露しやすい構造にするんです。たとえば壁をエンボス加工して表面積を増やし、凸凹に結露水が付着しやすくします。また、ファンによる循環で空気が冷却器にあたるように調節すると、温かい空気が冷やされて水ができます。フォルスターやユーロカーブなど、大手さんも基本はこの仕組みです。
尚孝さん:昔はタンクとかトレーとかに水入れてるセラーなかった?
三木さん:最近はあまり見ないですね。スポンジに水吸わせて使うようなタイプはありますが。
尚孝さん:あー、でもあれカビ生えちゃうとすごいよね。ワインのラベルまで全部やられるし。
シロ:カビは面倒だし嫌ですねえ。多少乾燥しても平気って考え方はダメなんですかね?ワインボトル寝かせてるから、液面はコルクに触れているわけだし。そもそも立てて保存しても、液面とコルクの間は湿度100%って話も聞いたことあります。コルクが乾燥してダメになること、そんなにあるのかなって。
三木さん:そのあたりも、何が「正解」だとは言いにくい部分です。確かにおっしゃるような話もあります。ただ、長期的に影響はないと言い切ることも難しいんですね。一般的には湿度70%〜80%が熟成には最適と言われているので、長期保管を目的とするプロラインでは、なるべくそこを目指しています。短期保管であれば、その限りではありません。
おまけ:ワインセラーとクワガタ
シロ:ルフィエールにもらう要望って、他にどんなのがあります?
三木さん:面白いところでは、クワガタですかね。
シロ:あ、それワインセラー調べているときに知りました笑
尚孝さん:クワガタ?
三木さん:はい。温度を一定に保てるので、クワガタの幼虫をワインセラーで飼いたいって方、結構多いんですよ。菌糸ボトルに土をいれて、セラー内に並べるそうです。一応、生き物は入れないでって書いてあるんですけどね笑
シロ:クワガタは幼虫の期間が長い方が大きな成虫になって価値が上がるけど、自然の状態だと暑すぎて早く羽化してしまうらしいですね。
三木さん:そうなんです。でも温度が低すぎると、今度は冬眠してしまうそうで。なので「18度以上に設定できますか?」って問い合わせがあると、ああクワガタの人だ。と思いますね笑
シロ:クワガタの人w
尚孝さん:へー!設定温度上げてクワガタモデルやろか。ルフィエールにクワガタのかっこいいロゴつけて。案外売れるかもしれない。ペルチェ式だと加温できないから、コンプレッサーだな笑
シロ:いや笑う!(でもこの人はマジでやりかねんな……)
初めて買うワインセラーのおすすめ
今回、初めてワインセラーを買う観点からも、お二人にいろいろと質問してみました。
選び方として一番大事な結論は、「とにかくデカイのを買え」なんですが、初めてのワインセラーで大きめのセラーはやっぱり躊躇してしまうところもありますよね。尚孝さんが「これで決まり!」という94本タイプを、いきなり選べる方はなかなか剛の者だと思います。
ということで、初心者向けの小型ワインセラーのおすすめも聞きました。基本的にルフィエールのベーシックラインが、コンプレッサー式で安価、小型から中型までそろっているので、ここから選んでいけばOK。
安価で18本収納のC18B。(さらに一段少ない15本タイプ、C15Bも登場しました)
32本で2温度帯管理ができるC32BD。
同じく55本で2温度帯のC55BDなど。
これ以外の収納本数や、寸法の問題があるならスリムラインをチェックです。
まあ、安く小型を買ってもどうせ足りなくなるんですけどね。それはもう確実。そう、コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実に。私は最初に小型を買ったので、いま家に中・小型3台のワインセラーが稼働中です(ワーイ
もちろん設置場所の制約はありますが、「まずは小型で様子をみて……」とひよっていると同じ目に遭いますので、ぜひ大きめでどうぞ!(尚孝さんおすすめの94本収納↓)
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