シャトー・パルメは神の雫第二の使徒に選ばれたワインです。作中では母なるモナ・リザに喩えられ、優しさやふくよかさなど女性的なワインと表現されています。
シャトー・マルゴーに代表されるマルゴーのワインは、ワインの女王という呼び名もあるほど女性的な味わいで有名です。その中でもシャトー・パルメは、真にマルゴーを表現するワイナリーとして高い評価を受けており、3級格付けでありながらシャトー・マルゴーより優れているとする愛好家も多くいます。
今回は、シャトー・パルメの魅力や特長と、ネットでも買いやすいヴィンテージなどをご紹介します。
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目次
シャトー・パルメはメドック3級格付け
シャトー・パルメの格付けは3級ですが、その実力は五大シャトーと同じ1級相当と言われており、もし現在メドック格付けの見直しがあれば、まず1級昇格は間違いないとされています。有名なロバート・パーカーJrもパルメをシャトー・マルゴーの最大のライバルであるとして、真のマルゴーワインはシャトー・マルゴーとシャトー・パルメだけと言い切っています。
ちなみにメドックの格付けは1855年に決められたもので、シャトー・ムートン・ロートシルトだけが後に1級昇格を果たしていますが、すべてのシャトーが現在の実力を正確に反映しているわけではありません。パルメは当時のオーナーであったチャールズ・パーマー(シャルル・パルメ)将軍が手放してから変わり、メキメキと実力を上げ続けましたが、格付けの年には間に合いませんでした。そのため、現在のように2級以上の価格で取引されるほど評価を受けていても、メドック格付け自体は3級のままです。
私たち消費者にとっては、シャトー・マルゴーレベルのワインを少し安い値段で飲めるので、嬉しい限りですね。安いといっても結構なお値段ですけど。
シャトー・パルメの特長
シャトー・パルメの中心となる畑は、シャトー・マルゴーのすぐ南に位置しており、女性的で香り高いマルゴーワインの中でも、さらにエレガントで柔らかいワインを造ります。カベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローの比率が高いのが特長で、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルドをアッサンブラージュして造られます。
ガツンとパワフルなワインは目指しておらず、あくまで優しくエレガントです。そこにプティ・ヴェルドを加えることで、スパイシーなアクセントとなってバランスをとっています。
シャトー・パルメ公式サイトの情報量
シャトー・パルメはウェブサイトでの情報公開も積極的で、畑の特長やシャトーの紹介だけでなく、ヴィンテージ毎の葡萄収穫から醸造の様子まで詳細に公開しています。アッサンブラージュ(ブレンド比率)や飲み頃予想までかなり詳しく載っていますので、ワイン購入の際や実際に飲むときにも参考になります。日本語にも対応しています。
また、偽物を判別するためにキャップシールに固有の認証コードを貼り付けており、サイトから本物かどうか照会ができるようになっています。QRコードもついていますので、スマホで撮って確認することもできます。このクラスになると偽物も出回っているでしょうからね。
※追記:サイトがリニューアルしていろいろ変わってしまいました
ヴィンテージ毎の飲み頃(シャトー・パルメ)
パルメは公式サイトでヴィンテージ毎の飲み頃や熟成可能期間を紹介しています。以下、公式サイトから抜粋します。
CHATEAU PALMER
2010 2025-2050++
2009 2015-2050+
2008 2018-2035+
2007 2012-2024
2006 2016-2040++
2005 2020-2040++
2004 2030++
2003 2020+
2002 2020+
2001 2025+
2000 2040++
1999 2035+
1998 2035+
1997 2019. 飲み頃
1996 2030+
1995 2030+
1994 2020+
1993 2015+. 飲み頃
1992 2015. 飲み頃
1991 2020+. 飲み頃
1990 2025+
1989 2030++
1988 2025+
1987 2015. 飲み頃を過ぎた
1986 2025+
1985 2025++
公式サイトではもっと年代をさかのぼれます。それにしても長熟ですねえ。30年〜40年熟成がデフォです。ちなみに使徒に選ばれたのはシャトー・パルメ1999年で、対抗馬が2000年でした。2035年〜2040年まで熟成するんですね。
熟成可能年数が短いものは、基本的にあまり出来がよくなかった年となります。悪天候などにより、収穫された葡萄の品質が長熟に耐えられないためです。しかし、こういった年のワインは早くから飲めますし、一定の品質(なんといってもパルメです)を持ちながら比較的安価に購入できるので、お得感もあります。
また葡萄の出来が悪かった年ほど造り手の工夫が見られるので、優れた生産者だと逆に葡萄が良い年を超えるワインを造ったりします。神の雫作者もこういった造り手の努力が見られるワインを好んでいるように思えます。無理にグレートヴィンテージを探すよりも、オフヴィンテージワインを購入してみるのもアリですね。
シャトー・パルメのセカンドラベル、アルタ・エゴ
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シャトー・パルメのセカンドラベルは、アルタ・エゴ・ド・パルメです。ALTER EGOとはラテン語で「もう一人の自分」。神の雫作中では重要な意味を持ちました。
公式サイトによるシャトー・パルメとアルタ・エゴの違いは下記のとおり。
パルメとアルタ・エゴは、シャトー・パルメのテロワールの持ち味を異なるニュアンスで表現した2つの形であり、収穫年の気候条件によって生じる変化を2通りに解釈したものともいえます。音楽にたとえるなら、交響曲とジャズの編曲、絵画なら、古典絵画とその現代バージョン、文学なら、アレクサンドランと散文詩といったところでしょうか。
つまりアルタ・エゴはより「カジュアル」と読んで大丈夫ですかね。確かにボルドーの熟成されたがっしりした味わいよりは、果実味やフレッシュさが勝っている部分はあります。とはいえ、セカンドもかなり上質のボルドーワインであることは間違いなく、カジュアル・軽いといったイメージではないと私は思います。熟成させると、シャトー・パルメとの差は歴然となってしまいますが。
このALTER EGO(アルタ・エゴ)ですが、ネットで買うときには呼び名がいろいろあって検索に困ります。フランス語をカタカナに当てはめているので、仕方がないのですが、それにしてもこれはちょっと困る。
正式名:Alter Ego de Palmer
アルタ・エゴ・ド・パルメ 検索結果(Amazon、楽天市場)
アルテ・レゴ・ド・パルメ 検索結果(Amazon、楽天市場)
アルテル・エゴ・ド・パルメ 検索結果(Amazon、楽天市場)
これに加え、「ド」を「ドゥ」と読ませたりするので、ますますカオス。そして検索結果を見ればわかるとおり、すべてを一度に結果に反映させることができていません。アルタ・エゴ・ド・パルメに限ったことではないですが、曖昧検索っぽいシステムでなんとかしていただければワイン飲みとしてはありがたい……。
さらにはアルタ・エゴ・ド・パルメというワイン名は1998年以降のもので、それ以前のヴィンテージではラ・レゼルヴ・デュ・ジェネラル(La Reserve du General)という名前です。ほんとにややこしい。
ネットで買える飲み頃ヴィンテージ
1991年、1992年、1993年は急いで飲んだ方がよさそうですね。特に1993年は2017年までに飲んでおきたいワインだそう。私は10年ほど前に’93を飲んだのですが、その時でもバラの華やかな香りと、柔らかい深みが出てましたので、今ならもっと良い感じに熟成してそうです。93年は一般的に良いとは言えない年なので、価格も手ごろです。あくまでパルメの古酒にしてはですけどね。(パルメ公式では「良いヴィンテージ」と言っています)
2000年代になって、パルメはさらに綺麗にまとまったワインを造るようになっている印象です。価格もあがっていますけどね……。
香りが華やかでエレガントで優しく女性的。でもしっかりと芯はある。そんなイメージのワインをお探しなら、ぜひシャトー・パルメをどうぞ。