今年もボジョレー・ヌーヴォーの季節がやってきましたね。
ボジョレーの帝王と言えばジョルジュ・デュブッフ氏。優れたワイン醸造家でありながら、希代のマーケッターである氏が作り上げたお祭りであるボジョレー・ヌーヴォー解禁日は、時差の関係で他の先進国より早くボジョレー・ヌーボーが味わえる日本において、毎年必ずニュースになる大きなイベントになりました。
Photo by:Bordeaux.com
今年は当たり年?
「今年は100年に一度の出来!」などのキャッチコピーが毎年つけられるとネタにされていますが、どうもあれはボジョレー委員会公式のコピーじゃないそうですね。本来は、出来がいい悪いではなく、味の表現にとどめているとか。
真偽はともかく、まあキャッチコピーで「今年は出来が悪い」なんて言えませんし、マーケティングとしては引くに引けないところであることはよく分かります。でも消費者としては本当にウマいボジョレー・ヌーヴォーを飲みたいですよね!
そこで神の雫に登場したワインの中から、同じ生産者が造るボジョレー・ヌーヴォーを選んでみました。解禁前の新酒である以上「確実にうまいよ!」というのはわかりませんが、ワインは人が造るもの。その年のぶどうの出来(天)がどうであれ、人の手によって活かされるものでもあるのです(「天・地・人」は神の雫でも重要なテーマです)。なんの手がかりもないままコンビニやスーパーで見かけたものを買うよりは、漫画で紹介されたワインと同じ生産者であれば、当たりを引ける確率も上がると思います。
神の雫登場ワイン生産者
ドメーヌ・ルロワ ボジョレー・ヴィラージュ・プリムール
神の雫マリアージュに登場した、ルロワのボジョレー・ヌーボーです。過去にドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の共同経営者でもあったマダム・ビーズ・ルロワ女史がオーナーを務める、名門ワイナリー「ドメーヌ・ルロワ」。化学肥料を排するビオ・ディナミ農法で知られ、さらに厳しいテイスティングにより彼女が納得したワインしか出さないことでクオリティを確保しています(ルロワ女史は世界有数のワインテイスターでもあります)。
ドメーヌ・ド・オート・モリエール ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー
神の雫最終章マリアージュに登場したボジョレー・ヌーボー。本編でいう「使徒対決」の場に遠峰一青が持ち込んだことが衝撃でした。しかもクセの強いウォッシュチーズ・エポワスに合わせ、100%、完璧を超えるマリアージュと絶賛。お互いの存在がお互いを輝かせる最高の相棒、「ゴールデン・コンビのマリアージュ」と表現され、ページもかなりさいて紹介されています。2000円弱のワインにこれだけの評価は異例だったと思います。
ルー・デュモン ボジョレー・ヌーボー・ヴィエーユ・ヴィーヌ
ブルゴーニュで最も有名な日本人醸造家、仲田晃司氏が造るルー・デュモン・ボジョレー・ヌーボー・ヴィエーユ・ヴィーヌです。ヴィエイユ・ヴィーニュというのは「古木」という意味で、ルー・デュモンでは樹齢70〜80年のぶどうの木からボジョレー・ヌーボーを造っているそうです。
仲田氏は職人気質で徹底的に細部にこだわるワイン造りをなさっている方で、氏は神の雫でも漫画の中にキャラクターとして登場します。実直な人柄がよくでている描き方をされています。リンク先のサイトに仲田氏による、今年のボジョレー・ヌーヴォーの出来に関するコメントがあります。
すでに売り切れのショップが多く、在庫もあまりないように見えます。ルー・デュモンを飲むなら早めに確保しておいた方がよさそうです。
ルイ・ジャド ボジョレー・ヴィラージュ・プリムール
150年を超える歴史を持つ、ブルゴーニュの名門ルイ・ジャドです。広大な畑を持つ、ブルゴーニュ有数の巨大ワイナリーで、名門の名に恥じない品質のワインを出し続けることで有名です。神の雫に登場した「シャブリ」はその中でも有名で、ワインのエチケットデザイン見ればわかるのではないでしょうか。テロワール、つまり「天・地・人」の地を大切にし、畑の区画ごとの個性を出したワインを生産しています。
メゾン・ジョゼフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー
華やかでエレガントなスタイルのワインを造ることで有名なジョセフ・ドルーアンです。派手な広告やプロモーションはしませんが、その確かな品質で日本のワインラヴァーにもよく知られています。天然堆肥を使うビオ・ディナミ農法にこだわって、テロワールの表現を高めています。
ちなみに、「ボジョレー・ヌーボー」と「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー」の両方を生産しています。ヴィラージュは「村」の意味で、より限定された区画の生産になるため、一般的にはヴィラージュがついている方が高価です。他の生産者でも同様ですので、ワイン選びの際の参考に。
フィリップ・パカレ ヴァン・ド・プリムール フィリップ・パカレ ボジョレー・ヌーヴォー
ロマネ・コンティからの誘いを断って、自身のドメーヌを設立したことで有名なフィリップ・パカレ氏。今や自然派ワイン生産者の代表格となり、農薬や化学肥料を使わないことはもちろん、醸造においても完熟葡萄を天然酵母のみで発酵させるなど、狂信的なこだわりでワイン造りを行っています。繊細でエレガントなワインは日本でも大人気で、このボジョレー・ヌーヴォーもどんどん予約販売で売り切れているようです。アルコール度数が低めのワインを造ることが多いドメーヌですが、このボジョレー・ヌーボーではどうなるでしょうか。
フレデリック・コサール&ケヴィン・デコンブ ボージョレ・ヌーボー
フレデリック・コサール&ケヴィン・デコンブのボジョレー・ヌーボー。ブルゴーニュの生産者は、自らぶどう畑を所有してワイン醸造を行うドメーヌと、ぶどうを仕入れてワインを造るネゴシアンに分かれます。両方やっているところも多くあります。日本人的な感覚では、自社所有のぶどう畑から造るドメーヌの方がなんとなく良さそうに思えますが、ネゴシアンはぶどうの出来が悪い年でも、ブルゴーニュ中から良いぶどうだけを選んで仕入れることができる利点があります。
気になっているボジョレー・ヌーボーセット
上記でご紹介した神の雫登場生産者によるボジョレー・ヌーボーが入っているセットや、神の雫には出ていないけれど、個人的に注目しているドメーヌのセットなどです。
超有名生産者ボジョレー・ヌーヴォー3本セット
紹介したルロワとルイ・ジャド、ルー・デュモンに加え、ドミニク・ローランのボジョレー・ヌーボーが加わった4本セットです。ドミニク・ローランは新樽を使い、早くから飲んでおいしいワインを造ることで有名です。ボジョレー・ヌーボーにはぴったりのコンセプトかと。迷うなら、これを買ってみんなで飲み比べが面白いかも。
自然派ボジョレー・ヌーヴォー3本セット
上記でご紹介した、フィリップ・パカレが入った自然派の名手セット。いずれもビオ・ディナミ、自然派で知られる生産者ですね。
タイユヴァン・ボジョレー・ヌーボー3本セット
タイユヴァンとはパリにある三つ星レストランで、ワインのセレクトにおいて絶大な評価を受けるレストランです。タイユヴァンにワインがオンリストされることは、作り手にとって最高の名誉であると言われるほど。
そのタイユヴァンがセレクトするボジョレー・ヌーボーの3本セットです。赤・白・ロゼの3本なので、違った雰囲気が楽しめます。
ボジョレー・ヌーボーとボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー
生産者の紹介中にも書きましたが、ボジョレー・ヌーボーに限らず、ヴィラージュ(Villages)と名の付くワインがあります。ヴィレッジのフランス語ですね。ボージョレ・ヌーボーとは「ボージョレ地区でその年に造られた新酒」という意味ですが、ボージョレの中でもさらに限定された村で生産されるワインがヴィラージュを名乗れます。
ついでにヴィエイユ・ヴィーニュ(Vieille Vigne)という名称がついているワインもありますが、これは「古木」の意味で、ぶどうの樹齢が一定以上のワインにつく呼称です。樹齢が高いということは、それだけ根が地中深くまで伸びているということです。何層にもわたる地層からミネラルなどの栄養分を吸収することで、複雑な味わいになり、天候不順時も品質が安定すると言われています。何年以上ならヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)だというのは明確に決まっていないようですが、30〜40年以上であればV.V.と名乗ることが多いようです。
ボジョレー・ヌーボーを選ぶ際には(ボジョレーに限らずですが)、同じ銘柄であればとりあえず「ヴィラージュ」や「ヴィエイユ・ヴィーニュ」がついている方が高級と覚えておけばいいと思います。あくまで同じ銘柄であればですが。
祭りを楽しもう
ボジョレー・ヌーヴォーは果実味が残ったフレッシュさを楽しむものですので、通常ワインとして好まれる熟成感や複雑さは期待できません。しかし、これもまたワインのおいしさであり、ガメイ種がピノ・ノワールに比べて劣るとか、ボジョレー・ヌーボーを飲むのは日本だけとか、そういう無粋なことを言わず、祭りに乗っかって皆で飲んだ方が楽しいと思います。(現在はフランスでも、このお祭り騒ぎが日本から逆輸入されているようです)
ここに挙げた神の雫登場生産者であれば、大きく外すことはないと思いますので、ちょっといつもと違う雰囲気で飲むワインを楽しんでみてはいかがでしょうか。