示し合わせたわけでもないのに、その人と会うといつも同じものを食べている。ワイン営業の泉さん(@wine_izumi)と私の場合、それがスパイスカレーでした。
シロ:二人ともカレー好きだし、大阪でワインとカレーの会とかあるといいですね。スパイスの勉強もできたらなお嬉しい。
泉さん:やりましょう。
というわけで、唐突に決まった「スパイスを学ぶ、大阪スパイスカレー会」。企画をテキパキと組んでいただき、主旨に賛同してくださった方々が集まりました。
<参加メンバー>
湯たんさん
まーかさん
FREDさん
杉やんさん
あっちゃんさん
ワイン好きの一般男性Aさん
泉明宏さん
シロ
場所は大阪難波のワインバー、シャクト。カレーを作ってくださるのは店主の奥田麻衣さんです。
スパイスカレー好きで集まって飲もうぜってくらいに考えていたんですが、これが想像以上に楽しかった。気軽な雰囲気は残しつつ、しっかりカレーに合うワインや個別のスパイスについて学べる会にしていただきました。泉さんをご存じの方にはおなじみの「泉節」も健在でしたよ笑。
では、そんな当日の様子のレポートです。ご覧くださいませ!
目次
カレーに使うスパイスのお勉強
会場のシャクトさんに入ると、本日のスパイスカレー(と付け合わせ)に使われているスパイスの一覧が用意されていました。
これはありがたいですね。実物を見て、手にとって、嗅いで、説明を聞く。ここまでやるとやっぱり記憶に残ります。粉の状態で香りだけ取ると、一度にたくさんの種類は覚えられないんですよね私。あとで嗅覚の記憶がごっちゃになって「どれだっけ?」ってなってしまう。
魔法使いの杖みたいな形のクローブ(丁字)。
ぷっくりした実はカルダモン。
細長いのはクミン。
どうみてもただの木片なシナモン。
このあたりまでは分かりますが、知らないスパイスもありますね。
これはカスリメティ。カスリメティってなんだ?
うん、なるほど?
そんでこれがフェヌグリーク。
フェヌグリークはマメ亜科の一年草で、種子のスパイス利用のほか、「ギリシャの牧草」という名前どおり牧草としても使われてきたらしい。カスリメティはその葉の呼び名。そういえばスパイスカレーの上に草がのっかってることが多い気がする。これだったのか。
ベイリーフはローリエと似ていますが、あっちは月桂樹の葉。ベイリーフはシナモンの葉です。
葉脈が縦に3本入っているのがベイリーフで、ローリエは普通の葉っぱと同じで真ん中の1本から横に伸びていると教えていただきました。へえー。
とまあ、こんな感じで簡単なスパイス講座を開いていただき、カレーを味わいながら香りや風味の特徴を確認していきました。
当日のスパイスカレー
では、当日出していただいたスパイスカレーをご紹介しましょう。
キーマカレー
まずは基本の味をということで、あえてシンプルに仕上げたキーマカレー。出てきた瞬間、店中に漂うスパイスの香り。シンプルとはいえ、めちゃくちゃいろんな味がしてうまい。「スパイスカレー」を食べている満足感がすごいです。
このキーマカレーは、スパイスカレーの最小構成と言われるターメリック、クミン、コリアンダー、チリペッパーをベースに、ガラムマサラやカスリメティで味を調整されたそうです。上に散らしてある葉っぱ、キミがカスリメティだな?
カスリメティはそのままだとお茶っ葉みたいな香りしかしませんが、熱が入ると甘さとほろ苦い風味が出ます。後述しますが、ワインを合わせたときに感じた内容と似ています。カスリメティの効果だったのか?
鹿肉のペッパーフライ
2品目は、鹿肉のペッパーフライです。ペッパーフライは南インドでよく食べられる料理で、日本的な感覚でいう「カレー」よりも、肉のスパイス炒めに近い感じ。今回はカレーに寄せてありました。
香辛料感がものすごい。徳を積んだドンタコスが転生して神属性を得たような味で、激しく美味いです。
このカレーには「ブラックペッパーがアホほど入っている」そうで、コショウの辛味で食べるカレーです。先のキーマカレーが唐辛子を使ったカレーだったので、違う辛さのスパイスを使って比較できるようにしてくださいました。
さらに大きめの鹿肉がゴロゴロ入っていて、食べ応えも抜群でした。
鹿肉は嫌な臭みがまったくなく、ウマいとこだけを残している感じ。猟師さんから「いい鹿肉入ったよ」と連絡があったので使うことにしたものの、今回特にジビエを使うとは言わずに参加者を募集したので、できるだけ食べやすくしたとのこと。
赤ワインとスパイスに4日ほど漬けて、下処理を丁寧にしていただいたそう。さらに作り始めと最終工程にそれぞれ違うスパイスでテンパリング(スパイスを油で炒める)、仕上げに熱した油をジュワッとかけて提供されています。手間かかってるー。
このペッパーフライはブラックペッパーを大量に使うほか、クローブ、カロンジ、シナモン、ベイリーフなどのスパイスで味を調整されたそうです。いやー、美味しかった。
パキスタン風フィッシュカレー
3品目は当初予定になかったパキスタン風フィッシュカレー。魚はサゴシと連子鯛です。これもまた美味い。
「なじみの漁師さんにいい魚をいただいたので」と、作ってくださいました。漁師と猟師から海の幸・山の幸を。やっぱり美味い店は、いい仕入れ先を持ってはる。
何人かの方がココナッツカレー?と言っていたんですが、私も最初そう思いました。でもココナッツは入っていないそうです。スパイスと玉ねぎからくる甘さと、ヨーグルトのクリーミーな感触がそう思わせるのではないかとのこと。なるほど。
スパイスカレーに合わせたワイン
時間は前後しますが、スパイスカレーに合わせてもちろんワインも楽しんでおります。
この日のワインセレクトはすべて泉さんです。事前にカレー担当の麻衣さんからどんなカレーかを聞いて、そこから組み立ててもらいました。さてどんなワインが選ばれたか。ペアリング楽しみです。
インフィニット エイト ブリュット NV
まずはシャンパーニュです。インフィニット エイト ブリュット NV。こちらは会費外で、泉さんからの差し入れ。いろいろと会の世話役やってもらって、さらにシャンパンまでありがとうございます。
少し甘やかな香りながら、味わいは柑橘と酸味でキュッと締まっていて、食前酒としていい感じでした。
乾杯で飲み干してしまったので、カレーとは合わせていません。
グラント・バージ ベンチマーク・シャルドネ
次はグラント・バージ ベンチマーク・シャルドネ。オーストラリアの白ワインです。このワインの味わいが結構ナゾだったんですよね。
参加者に今年ワインエキスパートを受ける方がいらっしゃったので、みんなにボトルを見せず、「練習がてらブラインドしましょう!」と泉さん。資格持ち含め、普段からよくワインを飲むメンバー4名が挑戦します。よっしゃ、ワイン飲み勢の力を見せてやろうじゃないか。
正解:
オーストラリアのシャルドネ
回答:
1.南アフリカのシュナンブラン
2.フランスのルーサンヌ・マルサンヌ
3.アルゼンチンのトロンテス
4.スペインのアルバリーニョ
かすりもしねえ!
しかもみんなバラバラ笑。なんでや?といろいろ話し合ったのですが、どうもキーマカレーその他、スパイスの香りがすんごくて、ごっちゃになってるんではないかと。シナモンを中心とした甘やかな香りと、カスリメティの草っぽさ。この辺で混乱したと考えると、回答もうなずける?
さてそんなベンチマーク・シャルドネですが、肝心のカレーとの相性はどうでしょうか。ワイン営業として独立して、昨年はワインエキスパートも取得された泉さん。ワインセレクトの実力はいかに。ペアリングを試します。
一同:・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
シロ:さほど合ってなくない?
泉さん:そうなんですよ!
「知ってた」みたいに言わんといて笑。
なんでも前にアロマティック品種とスパイスカレーの相性がいいのを確認していたので、今回はニュートラルな品種を試してみたかったとのこと。「今後のためにシャルドネを“ベンチマーク”として設定したかったんですよ」ってやかましいわ。
まあ気楽な会なので、こうやって実験できるのもいいところ。参加者も正直に「合わへん」ってツッコんで、みんなで笑えるのも泉さん会ですな笑。このワインはカレーの辛味とケンカしてる感じでしたかね。「なんで合わないのかな」という話ができたのも、勉強になってよかったです。
と、ここでワインはあまり詳しくないという参加者の方から、「にんじんとすごく合うんですけど」と。
ほんまやめっちゃ合う!キラタのココナッツや出汁っぽさがワインのまろんとした風味とマッチしています。カレーじゃなかったけど、ペアリング成立してよかった。おめでとうございます。
キラタはスリランカ料理で、スパイスをたっぷり使ったお総菜。今日のはシナモンなどの香りスパイスと青唐辛子、そしてモルディブフィッシュ(マグロ節)を削って和えてあるそう。これ自体も非常に美味しかったですね。
キーマカレーの赤唐辛子ではワインと辛味が合わなかったけど、キラタの青唐辛子だとケンカしない。同じ「辛味」でも、違うんですねえ。
グラント・バージ ベンチマーク・シラーズ
続いては赤ワインです。先ほどの白と同じ造り手・同じシリーズで、グラント・バージ ベンチマーク・シラーズ。2品目のカレー、鹿肉のペッパーフライが来たタイミングでいただきました。
かなり甘い香りがあって、薬草っぽい。清涼感もあります。これもブラインドでいきましょう。
正解:
オーストラリアのシラーズ
回答:
1.スペインのテンプラニーリョ
2.スペインのカベルネ・ソーヴィニヨン
3.イタリアのカベルネ・ソーヴィニヨン
4.南アフリカのカベルネ・ソーヴィニヨン
3人が品種をカベルネ・ソーヴィニヨンと答え、あとはもう国当てゲームか?と思いきや、品種も合ってませんでしたからね笑。
これもやっぱりカレーと混ざって勘違いしたんでしょうか。ブラックペッパーを大量に使った鹿肉のカレーを先に口にしていたせいか、私はワインからスパイシーさをあまり感じず。嗅ぎ取っていた方もいたので、実際はしっかりあったようです。
鹿肉カレーとの相性は評価が分かれました。そつなく合っているとは思うんですが、「苦みが残る」という感想も。コーヒー好きの方なら合いそうとのことだったので、タンニンが残るのかな?私は血、鉄っぽさを少し感じました。このあたりは、ジビエが好きかどうかで評価が変わる気がします。
いうてもカレーと赤ワインってペアリングが難しい部類だと思うので、この組み合わせはなかなかいい感じだったと思います。
インドミタ レイトハーベスト
ラストは甘口の白ワイン、インドミタ レイトハーベストです。
ゲヴュルツトラミネールとソーヴィニヨン・ブランから造られる甘口ワイン。文句なしに、今日イチでスパイスカレーに合うワインでした。
単に甘さと辛さの組み合わせというだけではなく、スパイスカレーならではの相性を確かに感じました。また、熱くて辛いカレーと冷たく甘いワインの組み合わせが本当に心地よく、交互に口に運ぶ手が止まりません。サウナと水風呂?いいえ、これはハイプレッシャーとホワイトブレスのレボリューションです。凍えそうな季節に君はカラダを夏にするぞ!
それで、このワイン1200円ほどなんですね。500mlボトルですけど、めちゃ安い。これは価格以上の味わいと言っていいでしょう。家に1本置いとこうと思いました。
みんなもレボリューションしてみない?
さて、これで本日のカレーとワインはすべて出そろいました。ご一緒させてもらった皆さま、ありがとうございました。あとは思い思いにトークタイムです。カレー談義も多かったですね。
大阪のスパイスカレーの名店や特徴の話のほか、スパイスカレーの「コク・余韻」は、「香り・インパクト」とトレードオフである。って話が面白かった。スパイスは油でじっくり炒めたほうがコクが出るけど香りは飛ぶみたいな話なんですが、だからインパクト重視で追いスパイスをバッサーと入れる店も増えているみたい、ということでした。なるほどね。今度から気をつけてチェックしてみよう。
最後にお土産としてシャクトさん特製スパイスカレーの素とレシピをいただきました。もう至れり尽くせり。会の途中、麻衣さんがスパイスカレーを作っているところは撮れなかったので、かわりに私のつくれぽを載せておきます。
キーマカレーを作ろう
それでは、シャクトさんでいただいたお土産スパイスセットで、キーマカレーを作ります。
実はスパイスから作るのは初めてです。“休日にスパイスカレーを作り始めるおじさん”が新しく図鑑に登録されます。
スパイスは固形と粉に分かれています。平べったい木片はシナモンですね。2つ見える大きめの種はカルダモン、小さいのはクミンです。クローブもちょこっと見えています。粉のほうは色合いと香りから、カイエンペッパー、コリアンダー、ターメリックでしょう。お店で聞いたばかりだから、さすがに覚えています。
※粉のほうの主要なスパイスは、コリアンダー6g、クミン3g、ターメリック2g、カイエンペッパー2gだったそうです。
ほかに用意する材料はこんな感じ。
キーマカレーの材料
合い挽き肉 400g
玉ねぎ 小2玉
トマト缶 半分
ヨーグルト 100g
しょうが 1かけ
にんにく 1かけ
塩 適量
キーマカレーはひき肉のカレーなのでこれだけでいいそうなのですが、ちょっとほかの食感がほしかったので、私はあとでナスを角切りにして入れました。豆類やフレッシュトマトなどもよさそうですね。
まずは玉ねぎ、にんにく、しょうがをみじん切り。ついでにナスも刻んで、包丁を使う工程はこれで終了です。
フライパンに油を入れたら、まずは固形スパイスを炒めていきます。シナモンの存在感よ。どこからどう見ても拾ってきた木片。
カルダモンがぷっくりと膨らんできたらOK。この時点でインドや東南アジアの雑踏のような香りが部屋に漂います。いいですね。
玉ねぎを投入。塩をひとつまみ入れて、中火で飴色を目指して炒めます。ここはけっこう時間がかかるので、ソシャゲのアリーナで粘着してくるヤツをシバくなどして、時間を有効に使います。
焦げ付かないようにときどき差し水をして、ジワジワと色が変わっていく様子を眺めます。それにしても木片の存在感。
さっきの写真からもうちょい炒めたところでトマト缶。そのまま水分を飛ばしていきます。
煮詰まってきたら粉スパイスを投入。香りがすげえ!一気にスパイスカレーになりました。
まとまりが出るまでこのまま炒めます。水分量の目安は、カレーロードなるものが作れるくらい。
これがカレーロード。
このカレーロードでひき肉を焼きます。ひき肉はパックの形のまま両面を焼いてからほぐしたほうがうまいです。アイラブメイラード。
肉がほぐれたらヨーグルトを投入。少しずつ入れないとダマになるらしい。
私はこのタイミングでナスを入れました。
もう少し火を入れたら塩で味の調整をして、好みのゆるさになるまで煮詰めたら完成です。
シナモンは最後まで立派な木片だったので、取り除いておきました。
そして初めて自分でスパイスから作ったキーマカレーがこちら。
おおー、まごうことなきスパイスカレー!味も完璧、めっちゃうまい。スパイスの配合をプロにまかせているので、美味しくて当たり前かもしれませんが、こんなんが自宅で味わえるなんて。これは達成感がすごいわ。
ウチは私以外辛いもの食べられないので、ひとりで3日間に分けて食べたんですが、まだまだほしい。ぜんぜん飽きない。パスタにしても抜群に美味かった。
さらに、いただいたスパイスはわりと基本的な配合とのことで、ここからのアレンジは無限。いやー、知ってたけど奥が深いっすわ。スパイスカレー。「休日にスパイスカレーを作り始めるおじさん」なんて揶揄しちゃダメダメ。休日のスパイスカレー作りから人生は始まるのだ。
スパイスカレーとワインはいいぞ
ということでスパイスカレーとワインの会、後日の自作体験も含めてめっちゃ満足でした。また別の味のカレーもワインと合わせてみたい。スパイスカレー好きな方、参戦お待ちしております。
今回お店を使わせていただき、スパイスカレーを作ってもらったシャクトさんではちょいちょいイベントをやっているそうで、「旅先で見つけたご当地レトルトカレー持ち寄り会」なんてのもあるそうです。なにそれめっちゃ面白そう。
基本はワインバーなので、もちろんワインも充実。カレーだけじゃなくて料理がほんまに丁寧に作られていて美味しいので、関西の方はぜひ一度行ってみてください。小ぢんまりとしたお店で、ひとりでも入りやすいです。
また、今回の企画をまとめてくださった泉さんは、ゆるくワインでつながる「婚活ワイン会」とかもやってはるんで、こちらもぜひ。趣味が同じだと話題に困りませんしね。独身の方、特に男性募集中だそうですよ。(→@wine_izumi)
ということで、また何かの会をやるときはお知らせするので、少しでも興味があればぜひ気軽にご参加くださいねー。それまでどうぞお元気で!(おじいちゃんみたいな挨拶)