いつもどおりのある日の事、君は突然立ち上がり言った「事務所貸してもらえませんか?愛媛から食材持って行って、僕が料理を作ります。費用はすべて自分が持ちます!」
「え?いきなり何言ってんのこの人(歓喜)」
という話から始まった、シェフ自慢の料理とワインを堪能する会。Twitterで交流のあるワイン好きメンバーが集まりました。激務の合間を縫って、はるばる愛媛から関西へお越しいただいたシェフ兼ソムリエは青野さん。会場の提供は、神戸ワイン会でおなじみオムライスさんです。
さらに今回は、いつもの関西メンバーに加えてMOMOさんが参戦。「青野さんや関西の皆に会いたい!」と来てくださいました。
<参加メンバー>
青野さん(@mino_vincurry)
MOMOさん(@momo52831235)
オムライスさん(@CsJ5GPVrbWZwCy0)
ワインの泉さん(@akihiro19840807)
豆しば:ワインさん(@mame_wine)
シロ(@salewine22)
皆Twitterでよく話すので、あまり初対面という感じはしないのですが、青野さんとMOMOさんは関西のワイン会には初参加。わざわざお越しいただいて嬉しいやらありがたいやら。関西メンバーのテンションも爆上がりです。
と、こんなメンバーで行われた、通称「青野会 in 神戸」。普通のオフィスでいったいどんな料理が出せるのか。ワイン会の様子、当日のメニューやワインをご紹介します。ワイン会を企画中の方に参考になるかも?
目次
シェフの料理とブルゴーニュワインを味わうワイン会
さて、すっかりオフィスが「調理もできるワイン会の場」として認知されてしまったオムライスさん(私のせいじゃない)。「人の事務所をなんだと思ってるんだコノヤロー」と言いながら、いつもうっきうきで企画を組んでくれます。チョッパーかな?
今回、料理はすべて青野シェフにおまかせのワイン会なので、ワインはオムライスさんが提供することに。「ではこちらも本気を出しましょう」と、自身のワインセラーからです。もちろん大好物のブルゴーニュで、ワインリストはこちら。
- アンリ・ノーダン・フェラン オルキス・ルージュ 2015
- アンリ・ノーダン・フェラン オルキス・ルージュ 2016
- アラン・ユドロ・ノエラ ヴージョ プルミエ・クリュ レ・プティ・ヴージョ 2017
- ショーヴネ・ショパン ヴージョ プルミエ・クリュ レ・プティ・ヴージョ2017
- G.ロブロ・マルシャン シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ レ・フュエ 2012
- G.ロブロ・マルシャン シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ レ・グリュアンシェール 2012
お気づきでしょうか。こちら2本ずつが対になっていて、それぞれ「ヴィンテージ」「生産者」「葡萄畑」の違いを比べられるようになっているんですよ。なんという神企画。本気出しすぎでしょう。ワインもシェフの料理を受けて立つにふさわしいラインナップとなりました。
ちなみに他のメンバーは、遠方から来られたシェフに食材調達から調理までさせて、費用も持たせるとかそんなワケにいかんでしょwってことで、会費をお支払いする形式になりました。ん?改めて書いてみたら、これもう普通にレストランやん。(事務所です)
プロが作る「ワインに合う」料理の数々
青野シェフが当日作った料理はどんなものだったのか。その前に、調理環境をお伝えしましょう。
火力はカセットコンロ1つです。調理スペースはこれが乗っかっている台と、後ろに田舎の台所でよくみる感じのシンク。まあ狭いです。
あとは小さなフライパンが1つに、
わりとシンプルな電子レンジと、これまた学生時代に使っていた感じの冷蔵庫。
上にジン・ウォッカ・ラムなどのスピリッツや、スコッチ、ルジェ・カシス、さらに杏露酒を乗せたら、私の大学時代が再現できます。ま、本来調理の必要なんかない事務所ですからねココ笑
で、これらの調理器具と環境で青野シェフが作った料理がこちら。
バァァン!牛・豚・鶏がすべて楽しめる肉の饗宴です!むはー、美しい。圧倒的な肉、溢れる赤のパワーエレメント。ゴー!ゴー!キッチン戦隊(ry
あの小さなフライパン1つで、ここまでの料理はさすがのひと言です。
メニューはこんな感じ。
- 地鶏のテリーヌ アナルダナ添え
- アムチュールのローストチキン
- 牛もも肉のタリアータ風
- 豚バラ肉のラグー オリエンタルスパイスと紅茶の香り
- 鶏レバーときのこのソテー
ほかにも、白ワインのスコーンやライ麦香るカンパーニュも焼いてきてくださったんですよ。ワインに超合うやつ。
調理はMOMOさんもお手伝い。普段から「え?この人プロじゃなかったん?」って感じの料理写真をアップされている御方なので、スーシェフとして大活躍。
トロ生食感の虜…?
レモンバタークリームソースのサーモンのレアカツ×ソーヴィニヨンブラン
レアカツのトロける食感とサクサクの衣、サーモンの旨みとレモンバタークリームの爽やかなコクにディルの青さ!リッチなSBの華やかさとほのかな樽、スーッと爽やかな草原の風の香りがベストマリアージュ◎ pic.twitter.com/MQVEOTEhLq
— MOMO?? (@momo52831235) December 20, 2020
そして、調理やワイングラスの準備をしながら開けたワインはこちら。
ドップ・オ・ムーラン クレマン・ダルザス・ブラン・ド・ノワール ブリュットです。泉さんが以前のワイン会で差し入れていたもの。
果実味のある爽やかなクレマンで、ワイワイ皆で作業をしながら飲むのにぴったりの泡でした。準備している間から、すでに美味し楽しい。
ファンタスティックな焼き色がついた牛もも肉。絶対ワインに合う旨いヤツ。食べなくてもわかる。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。
ローストチキンは、確か最後にちょっと電子レンジかけていた。すごいしっとりしていて、火入れ最高だったんですよね。環境が万全でなくても、そこにあるモノをうまく使って調理していきます。
鶏レバーを焼き焼き。
さらに、フライパンに入りきらない山盛りのキノコ。
さすがに入りきらないので、仕上げは土鍋でまぜまぜ笑
とまあこんな感じで、料理の準備をしました。2時間以上かかったかな?テリーヌなどは事前仕込みとはいえ、なんせ小さなフライパンで火力も1つですからね。
でも、調理も準備も皆で飲みながらするので、それもまた楽しいワイン会になりました。やっぱりこの方式はいいですね。
ブルゴーニュのヴィンテージ、生産者、畑を比べてみよう
素晴らしい料理ができあがったところで、ブルゴーニュワイン飲み比べがスタートです。
と、その前に。別枠で持ち込ませてもらったウェルカムシャンパーニュで乾杯。
ワインは帝王クリュッグです。毎度オムライスさんに追加でワインいっぱい出してもらっているし、いつも遊んでもらっている皆さんへの感謝と、ようこそ関西へ!を丸ごと込めて。
クリュッグはブルゴーニュグラスでいただきます。オムライスさん曰く、その方が圧倒的に旨いとのこと。若い頃によく飲んでいたんですが(他人の金です)、当時はシャンパングラスが当たり前だったので、私も初体験です。
やっぱめちゃくちゃ旨い!いやー、すごいですねクリュッグ。ブルゴーニュグラス大正義。旨すぎ、要素多すぎ。皆さんのコメントから一部ご紹介しましょう。
いやはや、クリュッグの素晴らしさが伝わるコメント、さすがでございます。
あ、そうそう。この後もワインのテイスティングコメントが多数出てきますが、すべて後から感想を聞いたものでして、会の最中はみんなで関係ない話もしながら、うまい!うまい!言うてケラケラ笑ってますw でもこうしてただの飲み会では終わらず、ちょっと勉強もできるのがワイン会のいいところ。
あと、クリュッグと「白ワインのスコーン」との相性も最高だったんですよね。旨かったなあ。
この、白ワインのスコーン、苦肉の策でぶっつけ本番で作った一品。
水分をすべて白ワインにして、バターたっぷりで、スコーンだけど、しっとり仕上げたんですが、これが大好評で嬉しかった??
白ワインの酸味と旨味があって、ワインと合わせても邪魔をしないクリアさ、いいレシピでした? https://t.co/bvosDKlrZs
— 青野 稔 (@mino_vincurry) December 31, 2020
青野さんがレシピも載せてくれているので要チェックや。
ヴィンテージ比較はアンリ・ノーダン・フェラン オルキス・ルージュ2015と2016
ではいよいよブルゴーニュ赤ワイン比較。最初のワインは、アンリ・ノーダン・フェラン オルキス・ルージュの2015と2016です。
ブルゴーニュの2015年は超優良ヴィンテージで、なかなか手に入らないワインも多い大当たりの年。2016年は悪天候などで収量が減少。でもその分、生産者の個性が出るワインに仕上がっているとのこと。
青野さんの華麗なサーブでいただきます。ちらっと写っていますが、オムライスさんがサンペレグリノを用意してくれていたので、リセット兼水分補給もバッチリ。
さて比べてみたお味は。
ですよねえ。これ、圧倒的に2015が美味しかった。
そして、料理のなかで「鶏レバーときのこのソテー」とのマリアージュについて、MOMOさんからこのコメント。
さらっと、鶏レバーとキノコとの相性をきちんと言語化してるの凄いなー。まさにまさに。ワインも料理もうまみが凄かった。今回MOMOさんは、このワインが1番好きだったとのこと。私も同じでした。アンリ・ノーダン・フェラン オルキス・ルージュ2015が、会で一番のワイン。
2016については、ソムリエ青野さんからのフォロー。
いきなりピークを迎えるブルゴーニュは珍しく、2016の方がよくある感じとのこと。会が始まる前にオムライスさんが抜栓してくれていて、良い状態ではあったんですけどね。ボトル1本ゆっくり飲むとまた違っていたんでしょうね。
生産者の比較はアラン・ユドロ・ノエラとショーヴネ・ショパン
さて次は生産者の比較です。ブルゴーニュは造り手で決まるという方も多いですが、同じ畑、同一ヴィンテージでどれくらい違うのか。ヴージョ村の一級畑、レ・プティ・ヴージョで飲み比べます。
まずアラン・ユドロ・ノエラ ヴージョ プルミエ・クリュ レ・プティ・ヴージョ 2017の方。
豆しばさんは、残ったワインをお持ち帰りしたので、2日目のコメントもあります。というか、ワイン飲み始めて1年も経っていない方のコメントとは思えませんね。
土浦鈴木屋 福箱
そろそろ中身をネタバレしても良いだろうと思い公開
・シャルム・シャンベルタン 1996
ドミニク・ローラン
新樽の魔術師
・シャトー・セルタン・ド・メイ 1983
有名なペトリュスの隣の畑
・コント・ド・シャンパーニュ 2006
2005がめちゃ美味かったので期待大 pic.twitter.com/jqJQVcSIX1— 豆しば:ワイン? (@mame_wine) January 6, 2021
まあ、こんな福袋買っちゃう方ですからね(3本6万円)。そりゃめっちゃお得やけども。ワイン1年生が「金欠だー」と言いながら買うもんやないと思う笑
こちらのアラン・ユドロ・ノエラに関しては、少々硬くて香りや味わいが十分に感じ取れない印象がありました。対照的に、比較したショーヴネ・ショパン ヴージョ プルミエ・クリュ レ・プティ・ヴージョ2017がまさに今飲んで美味しいワインだったので、評価が爆上がり。
飲むなり泉節が炸裂w。泉さんはアラン・ユドロ・ノエラを結構楽しみにしてたらしく、期待値の高さからこんなコメントに。でも私も同じ感想です。
他のメンバーも同様。一同が大絶賛したのはショーヴネ・ショパンの方でした。
豆しばさんの2日目情報から、やっぱりワインが開くタイミングで差が出たみたいですね。ユドロ・ノエラにはちょっと時間が足りなかったみたい。でも、事前抜栓でショーヴネ・ショパンをベストタイミングで出してもらったオムライスさんに感謝です。
それからMOMOさん。
楽しく会話しながらも、黙々と料理の分析をし、ワインとの相性を考えていた。初めてのスパイスを自分ならこう使うと、次の料理まで。楽しみながらもストイックに味わい尽くす感じがすごい。ホンマにプロちゃうんか?笑
そしてアラン・ユドロ・ノエラのポテンシャルについては、こちらのコメント。
ふむふむ、ユドロ・ノエラは小宇宙(コスモ)を燃やさないと本来の姿を見ることはできないらしいですw。相当な力を秘めている様子。
でもこれ、たぶん「ユドロ・ノエラだから」聞いて納得なんですけども、何の情報もないまま飲んだら私では分からなかったと思う。「これくらいのワインなのかな」で終わってしまった気がします。こういう話が聞けるのはワイン会のいいところですね。
と、こんな感じで、同じ畑でも造り手によってまったく違うということはもちろん、ワインが「閉じている」状態を解説付きで実感できた、大収穫の飲み比べでした。
畑の比較はG.ロブロ・マルシャンのシャンボール・ミュジニーで
さてブルゴーニュ比較の最後は、同じ生産者で畑による違いをみていきます。造り手はG.ロブロ・マルシャン。シャンボール・ミュジニーに4つの1級畑を持つ生産者です。「この2本は醸造工程が同じで、畑の特徴を捉える教材にぴったり」と、オムライスさんが選んでくれました。
畑はどちらもシャンボール・ミュジニーのプルミエ・クリュ、フュエとグリュアンシェールです。
もうこのへんは皆酔っ払ってきていて、あまり覚えていない方も多数笑 話が盛り上がってきてそっちに夢中なのもありますが。
私はフュエは華やかでシルキー、グリュアンシェールは冷たい感じだったと記憶しています。オムライスさんによると、ワインとして完成度が高いのはフュエ、シャンボール・ミュジニーらしいのはグリュアンシェールとのこと。皆にもおおむねフュエの方が好評でした。
そしてこんな話題も。
オムライスさん:ん?チョコ?それはどこの産地のかね、キミ。
青野さん:確かに産地によって違うしね。たとえば東南アジアのカカオは酸度が高く、コク浅めでうんちゃらかんちゃら。
おじさんたちが若者にウザがらみしてるー!w
さらに「さすがです!カカオも勉強したいです!」と100点満点のさしすせそを返す豆しばさんに、大丸の近くに産地ごとのカカオ売ってるとか、どこそこのバーに頼めば手に入るとか、本格的な手ほどきが始まる。
いや、実際はケラケラ笑いながら「うぜぇwww」ってやってるんですけどね笑 こういう話ができるのも、普段からいろいろなものに興味をもっている方々だからですな。楽しい。
あ、今回はフュエの陰に隠れてしまいましたが、グリュアンシェールの方も、「半分寝ているけど、確かな存在感。美しい色の花びらを内に秘めた、まだ硬い蕾のイメージ」(青野さん)だそうです。飲み頃はまだ先なんですね。
会の終わりはいつも寂しげ
オフィスでもここまでできた、シェフ兼ソムリエ付きの贅沢なワイン会。話も面白かったし、よく飲んでよく食べました。
テーマのワインが終わったあとは、オムライスさんが軽いノリで、軽くない追加ワイン。
トロ・ボー ブルゴーニュ・ブラン 2017。これまたすんごい旨いワインで、酔っ払いながらも皆が絶賛していました。いつもありがとうございます。
抜栓は泉さんの妙技で。
他には、
青野さんのお店近くにあるという“MOMO”のいちごケーキ。改めて、気持ちが溢れ出ているお土産ですね。
そしてMOMOさんからピスタチオ。なんかこれやたら旨くて、皆で話しながらずっとポリポリつまんでました。
と、こんな感じで昼過ぎから始まった会はやっぱり終電まで続き、すっかり夜が更けるまで遊んでしまいました。
最後まで残ったメンバーは、豆しばさんとオムライスさん、私。「今夜星を見に行こう」とは言いませんが、遠方の方から順に帰っていく姿を眺めながら、「楽しかったけど終わりは寂しいねえ」などと話しておりました。
でも、翌日に早くも次回の話をしている皆さんです笑 きっとまたやりましょう。いちワイン飲みとして、早く何も気にせずに、あちこちでワイン会が開かれる日が来ることを願っています。