ワイングラスの種類は、各メーカーが高級ワイングラスから日常使いまで、さまざまなブランドで展開しています。基本的にはワインの種類(味わい)によって使い分けていきますが、リーデル・オーのように脚なしデザインのものや、切り子をあしらった装飾品のようなワイングラスもあります。
そんな数あるワイングラスの中で、個人的に最も美しいデザインだと思うのがブルゴーニュ用ワイングラスです。ずんぐりと大きなボウル、先にいくほどすぼまっていくチューリップのようなデザインから、先端の返し。それを支える細い脚と大きめの丸い台座。なんというか、機能美とはこういうもののためにある言葉だと感じる造形をしています。
そんなブルゴーニュグラスの中でも最高の品質とデザインを誇るのが、リーデル・ソムリエ・ブルゴーニュ・グラン・クリュです。その造形美は高く評価され、ニューヨーク近代美術館でパーマネント・コレクション(永久収蔵品)として認定されています。
今回は、そんな最高級ハンドメイドワイングラス、ソムリエ・ブルゴーニュ・グラン・クリュに加え、ステム部分に黒をあしらったソムリエ・ブラックタイ、そして昨年新たにリリースされたシリーズであるリーデル・スーパーレジェーロのブルゴーニュグラスを比較試飲してみました。
完成されたソムリエ・ブルゴーニュ・グラン・クリュを超えることができるのか?
※記事トップの写真一番左はボルドーグラスです。スーパーレジェーロ・ボルドーに試しにブルゴーニュワインを入れて飲んでみました。が、やっぱりブルゴーニュ用ワイングラスじゃないと駄目です。これ一つで済んだら便利とか考えたけど、甘かった……。
ボルドー編はこちら
リーデル最高級ワイングラスを飲み比べた結果は?ボルドー編
目次
リーデルのブルゴーニュグラス
リーデルの最高級ハンドメイドワイングラスのシリーズは3種。ブルゴーニュ用ワイングラスは3種すべてに存在しています。
左から
- ソムリエ ブルゴーニュ・グラン・クリュ
- ソムリエ ブラック・タイ・ブルゴーニュ・グラン・クリュ
- スーパーレジェーロ ブルゴーニュ・グラン・クリュ
やっぱり美しい……。こうして見るとブラックタイとスーパーレジェーロの形はほぼ同じですね。ソムリエだけが背が低くてさらにボウルがずんぐりと大きくなっています。
そして相変わらずスーパーレジェーロは軽い。
ボルドータイプのスーパーレジェーロは132gでしたので、それよりは重くなりますがたったの149gです。ソムリエが245gでブラックタイが231gでした。ちなみに他社製のブルゴーニュグラスは296gですので、やはりリーデル製ワイングラスは基本的に軽いです。
ブルゴーニュ用ワイングラス比較試飲
ハンドメイドワイングラス3種に、リーデル・オヴァチュア・レッドワインと他社製のブルゴーニュ用ワイングラスを足して比較していきます。
- リーデル・オヴァチュア・レッドワイン
- 他社製ワイングラス
- リーデル・ソムリエ
- リーデルブラック・タイ
- リーデル・スーパーレジェーロ
この5種類のワイングラスで比較試飲をおこないます。小ぶりのオヴァチュア・レッドワインはチューリップ型にはなっていないのですが、安価なブルゴーニュグラスが存在しないので、赤ワイン全般用のこちらを比較対象にしました。
そしてワインはこちら。
ジャイエ・ジル・オート・コート・ド・ボーヌ2010でございます。
ジャイエ・ジルは、ブルゴーニュでも超有名生産者で、品質の高さには定評があります。1級畑や特級畑でない格下ワインであっても新樽100%使用というこだわりがあるドメーヌ。価格は4,000円〜6,000円程度ですが、エシェゾーなどの特級から、村名やブルゴーニュ広域ワインまで、何を飲んでもそのクラス以上の味わいがある優良ドメーヌです。
ちなみに、ジャイエ・ジルはあのブルゴーニュの神様アンリ・ジャイエの親族です(アンリ・ジャイエと父親がいとこ同士)。このワイン、神の雫では1巻に登場しました。
ワイングラス比較 ブルゴーニュワイン試飲1日目
すべてをグラスに注いで並べます。ボルドーのときも並べると香りがすごかったですが、さすがにブルゴーニュはその上をいきます。部屋がお花畑に。
順番に香りを嗅いでいきます。やっぱり1番のオヴァチュアは弱い。小ぶりですしこれは仕方がない。他社製のものもほとんどオヴァチュアと変わらない。大ぶりグラスなのになぜだ……。そしてリーデルのハンドメイド3種。香りの内容はすべて同じで、ベリー系と花。香りの強さは、ソムリエとブラックタイは同じで、スーパーレジェーロが一番強く香ります。
一口ずつ順番に飲んでいきます。うーん、酸っぱい。まだ全然本領を発揮しておりません。
何周もして20分〜30分で飲みきりましたが、ハンドメイド3種に少し甘味が出てきただけで、あんまり最初と変わりません。これはちょっと比較がしにくい。ボルドーのときと同じく、しばらくおくことにしました。
ワイングラス比較 ブルゴーニュワイン試飲2日目
2日間おいたものを注ぎます。あきらかに香りの種類も変わった。ベリー系に加え、花とバニラの香りが強く出ています。めちゃくちゃ華やか。
一口ずつ飲んでいくと、これはうまい。凝縮されたピノ・ノワールの果実味を感じます。甘味も出てきているので、強かった酸味がコーティングされ、絶妙なバランスで入ってきます。ジューシーで、濃くないのに深みがある。まさにエレガントというべき味わいになっています。これはいいワイン。
ざっくりと表にするとこんな感じです。
香り | ボディ | 酸味 | 甘味 | 余韻 | |
オバチュア | △ | △ | △ | ○ | ○ |
他社製 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ソムリエ | ◎+ | ◎+ | ◎ | ◎ | ◎ |
ブラックタイ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
レジェーロ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
このブルゴーニュワインを飲み比べて思いましたが、ピノ・ノワールやネッビオーロなど、華やか繊細系の葡萄品種はオヴァチュア・レッドワインだとかなり厳しいですね。香りも味わいもほとんど引き出せません。
それから他社製のワイングラスも、形はブルゴーニュ用なのにブルゴーニュワインの繊細さがぜんぜん出ません……。
対してリーデルのハンドメイド3種は、華やかで繊細なピノ・ノワールの特長をはっきり引き出しています。これ、ほんとにこれらのワイングラスで飲むと美味しいですよ。ボルドーよりブルゴーニュの方がワイングラスにより大きく左右されるんじゃないかな。
ソムリエ、ブラックタイ、スーパーレジェーロの比較では、香り・味ともにいちばん強く迫ってくると感じたのは、ソムリエです。
最も古いワイングラスですが、やはりこの形状は完成されているのでしょうか。それか、ジャイエ・ジルのこのオート・コート・ド・ボーヌ・ルージュが、オーソドックスなスタイルのブルゴーニュワインだからかもしれません。
もう少しコクを強調したブルゴーニュや、バローロ、バルバレスコなどのネッビオーロ主体のワインには、新しいスーパーレジェーロなどの方が合うかもしれないですね。
リーデルのブルゴーニュワイングラスおすすめは?
このリーデルハンドメイドシリーズ、3つのブルゴーニュ・グラン・クリュからおすすめを一つ選ぶとすると、これはボルドーグラス以上に難しい……。ブルゴーニュワインファンならスタンダードなソムリエ・グラン・クリュがいいと思います。デザイン(機能美)も最高ですし、味わいも完璧。
なんですが、ブラックタイもスーパーレジェーロも、ソムリエに比べてもちろん落ちるわけではなく、十分すぎるほどワインの魅力を引き出してくれます。そしてブラックタイはワインを注いだときの美しさ。
どうすか、これ。ワインとステムが一体となったこの感じ。私はもともとブラックタイのデザインに惹かれていましたが、実物を見て、使ってみて、心底これは美しいと思いました。(写真は夜に電球色照明のもとで撮ったもの)
そしてもう一つのスーパーレジェーロは機能面で優れています。ボルドー編でも書きましたが、軽いのでスワリングしやすいんです。つまりワインがひらきやすいということ。
あとはどの産地のピノ・ノワールをよく飲むかでしょうか。ブルゴーニュは安価なものを適当に選ぶと、酸っぱいだけのワインに当たる確率が非常に高く、私は普段飲みでエレガント系が飲みたい時は、新世界のピノ・ノワールやネッビオーロなどを選びがちです。最近のリーデルは新世界ワイン対応を進めているようですので、そうするとブラックタイやスーパーレジェーロなどの新しいシリーズがよさそうです。
ということで、リーデルハンドメイドシリーズのブルゴーニュグラス3種のおすすめについては、三者三様であり、好きなものを選んで大丈夫いうことでお願いします……。まあ、このクラスまでくるとどれを選んでも失望はありませんので。
おまけ:ハンドメイドの高級ワイングラスを買うなら、クロスはあった方がいいですよ。サッと綺麗に磨けます。