ルチアーノ・サンドローネ・バローロ・カンヌビ・ボスキス(現在はバローロ・アレステに改名)は、神の雫使徒ワインの中ではかなり手に入れやすいワインです。市場に出回る量も価格も。価格は当然あがっていますが、使徒に選ばれた2001ヴィンテージもまだネットで手に入ります。(値段はえらいこっちゃですけどね……)
ルチアーノ・サンドローネ・バローロ カンヌビ・ボスキス(アレステ)
Luciano Sandrone Barolo Cannubi Boschis
バローロはバルバレスコとならび、イタリアワインの王ネッビオーロ種から造られる、イタリアを代表する高級赤ワインです。
バローロ・カンヌビ・ボスキスは、神の雫において、六番目にして初めてフランス以外から使徒として登場したワイン。イタリアだけど弥勒菩薩半跏思惟像にたとえられたのが印象的でした。
バローロはイタリアのワイン法でDOCGという最高峰に位置付けられています。バローロを造っている生産者は多くありますが、ルチアーノ・サンドローネは、地域名を表すバローロに、ブルゴーニュのような畑ごとの品質概念を初めて持ち込んだ生産者だと言われています。
今回は神の雫第六の使徒に選ばれた生産者ルチアーノ・サンドローネのおすすめワインをご紹介します。
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目次
第六の使徒バローロ・カンヌビ・ボスキス
神の雫第六の使徒に選ばれたバローロ・カンヌビ・ボスキスは、ルチアーノ・サンドローネが所有するカンヌビ/Cannubi畑の最上区画からとれた葡萄を使って造られます。ブルゴーニュのモノポール(単一畑)と同じ概念です。
バラの香りと、チョコやベリー系の果実味も感じます。全体的に丁寧にまとまっていて、力強いのにエレガントなワインです。やはりボルドーともブルゴーニュとも違うと思わされます。ネッビオーロは酸味が強いとの評もありますが、このワインはタンニンも酸味も綺麗にバランスがとれていて、神の雫作中の表現どおり、宇宙や闇の静けさのようです。
神の雫では「あまりにも複雑であまりにも難解。それでいて近づき方を間違えればなんの変哲もない単純な液体にさえ思える」と表現されており、単にバランスがいいだけのワインではないことを示唆しています。その奥深さを感じ取るにはスキルが必要そうですが、もちろん何も考えずに飲んでも美味しいワインです。
イタリアの高級ワイン「バローロ」とは
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イタリアにはワイン法があり、使用ぶどう品種や畑の収穫量、熟成期間などが厳しく決められています。
バローロはイタリアワイン法における格付けの最上位DOCGにあたります。バローロやバルバレスコの高級ワインのほか、キャンティ、アスティ、フランチャコルタなどもDOCGです。
フランスボルドーの格付けと違って、最上位のDOCGであっても安価なワインがあるので、DOCGワインだからといってまったく知らない生産者のワインを買うと失敗することもあります。
バローロの規定は、ピエモンテ州のバローロ村とその周辺地域で生産され、葡萄はネッビオーロのみ。畑は丘の斜面であり、土壌は石灰質か粘土質で収穫率は70%まで。などほかにも細かく規定があります。
この規定を守って造る生産者が、それぞれバローロと名の付くワインを生産しているため、味も値段もバラバラなバローロが店頭に並ぶわけです。
高級ワインなのに3,000円くらいで買えるバローロもありますからね。一度3800円のを飲んでみましたが、バローロを期待すると味はまあ……。生産者をよく見て買うのが大事ですね。
ルチアーノ・サンドローネのおすすめワイン
使徒に選ばれたバローロ・カンヌビ・ボスキスは、フラッグシップワインで素晴らしいものですが、それ以外にもルチアーノ・サンドローネはこだわりの上質ワインを造っています。
フラッグシップワインであるカンヌビ・ボスキスだけでなく、普及価格帯のワインにまで製法は一貫しており、葡萄は化学肥料なしの手摘みという手間をかけて造られます。醸造されたあとも、熟成が満足に進まないものはバローロには使わず、業者に売り払ってしまうという徹底ぶりです。ルチアーノ・サンドローネの名を冠するワインは、低価格キュヴェであっても厳しい選別を勝ち抜いてきたワインたちです。
バローロ・カンヌビ・ボスキス(アレステ)/Barolo Cannubi Boschis(Aleste)
何はともあれルチアーノ・サンドローネといえばまずはこれです。使徒ワインであるバローロ・カンヌビ・ボスキス(現在はバローロ・アレステに改名)。創業のワインであり、現在もルチアーノ・サンドローネのトップキュヴェです。若いうちから飲めると言われていますが、やはり10年(もっとかな)は熟成させた方がさらに美味しいと思います。私もそれほど多く飲んでいるわけではないですが。
バローロ・レ・ヴィーニェ/Barolo Le Vigne
こちらは単一畑ではなく、4つの畑からとれる葡萄をブレンドして造られるワインです。価格帯はカンヌビ・ボスキスと同等で、こちらもフラッグシップワインです。単一畑ではないといっても、それぞれの区画が最上の葡萄を生み出せる畑ですので、もちろんただの混ぜものではありません。
ブレンド(アッサンブラージュ)することの利点は、葡萄のできにバラツキがあっても、比率を変えることで高品質のワインを安定して造ることができる点です。複雑さも増します。元々バローロはこちらの作り方が主流です。
カンヌビ・ボスキスよりやや厚みがある味わいですが、どちらもレベルが高く、味の差は単に好みの違いでしかないと思います。
ネッビオーロ・ダルバ・ヴァルマッジョーレ/Nebbiolo d’Alba Valmaggiore
こちらのネッビオーロ・ダルバ・ヴァルマッジオーレは、バローロ・カンヌビ・ボスキスと同じく神の雫に登場したワインです。使徒対決の後にワインバーで藤枝さんが出したワインですね。
ネッビオーロ・ダルバはイタリアのワイン法において、バローロの呼称DOCGの一つしたであるDOCに位置づけられるワインです。一般的にはバローロに劣ると認識されるワインですが、ルチアーノ・サンドローネはこのヴァルマッジョーレ区画の葡萄を使いたくてこのワインを造ったと言われています。
ヴァルマッジョーレの区画はルチアーノ・サンドローネのほかに、有名生産者ブルーノ・ジャコーザもネッビオーロ・ダルバを造っており、品質の高さが伺えます。ちなみにブルーノ・ジャコーザはこの使徒対決において、遠峰一青が使徒候補として持ち込んだバローロ・赤ラベルの生産者です。
神の雫では、鐘の音にたとえられ、華やかで印象的だけどどこか孤独な響きと表現されています。味わいはブルゴーニュに近いフレッシュなベリーが特徴で、5,000円程度で買える嬉しいワインです。
バルベーラ・ダルバ/Barbera d’Alba
上の3種はネッビオーロ種ですが、こちらはバルベーラという葡萄を使っています。バルベーラの特徴は酸味が強いこと、若いうちから飲みやすいことです。タンニンが少ないので渋みを感じず、キャンティやボジョレーがお好きなら合うと思います。
私は酸味がそれほど得意ではありませんが、こちらはバニラ香もコクもしっかりしているので、それが酸味とうまくマッチしているワインだと思います。
バルベーラは生産量が多く、庶民の味として値段も安くなっています。これはルチアーノ・サンドローネなので、デイリーというわけにはいかないと思いますが。
ドルチェット・ダルバ/Dolcetto d’Alba
こちらはドルチェットという葡萄を使います。ドルチェットは短期間の熟成に向いた葡萄で、早くから飲めるのが特徴です。また、ドルチェット・ダルバは古くからイタリアの庶民派ワインとして定着しており、安価なのも嬉しいところ。タンニンはしっかりあるのですが、それよりも早飲みでフレッシュさを楽しむワインです。
2,000円台で買えるので、そこそこ気軽に試すことができます。
ルチアーノ・サンドローネの偉業
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生産者のルチアーノ・サンドローネ氏は、元々は別のバローロ生産者で働くサラリーマンです。そして1978年に自らのワイナリーを立ち上げますが、当初から大人気であったルチアーノ・サンドローネは創業から10年以上は副業だったということです。元いた会社を辞めずにやってらしたのですね。
ワイナリー立ち上げの前に購入した「カンヌビ/Cannubi」の畑でとれた葡萄で造ったバローロが1982年のイタリアワイン見本市でブレイクします。バローロはワイン法で製造方法も厳しく決められており、最低38ヶ月の熟成が必要なので、ワイナリー立ち上げとリリースに差が出ます。会社を辞めずに当初のワイナリー経営をするのは、理にかなっているのかもしれませんね。
氏はモダンなバローロを造るバローロ・ボーイズの一員でもあります。ブルゴーニュの畑を細かく区分する概念をバローロに持ち込み、生産もバリックと呼ばれる小樽を用いてブルゴーニュ流で熟成させました。この手法はバローロの新しい手法として今では定着しています。